究光塾リポート

第二十六回 究光塾リポート

2018年11月10日

< 第二十六回 究光塾 講義概要 >

 

1.      講義

2.      次回までの課題 ご説明 

 

 

【講師 中村より お伝えしたこと 抜粋】

 

☑「知能と知性」「目標と目的」

以前にもお伝えしましたが、「知能」という言葉、「知性」という言葉があります(参照:平成30年5月度 第21回究光塾リポート)。私は、この「知能と知性」の違いとは、「目標と目的」の違いとして捉えることができるのではないか、と考えています。

まず、目標と目的の定義を再度確認しますと、「目標」とは目的を達成するための手段であり、「目的」は目標の存在理由ですよ、ということであります。これを「知能と知性」に、応用して考えることができます。どういうことかと言いますと、「知性」というのは、「目的を設定する力」なんだと私は考えています。つまり、「知性」があるから「知能」というものは活きてくるんだろうと思うんです。そして、「知性」というものを支えるのが「リベラルアーツ」というものなんですよ、こういうふうなことであります。

「知能」が高い人というのは、演算能力・事務処理能力が高い、たとえば、フレームワークを利用したりとか、答えが決まっていることに関しては間違わず行動することができます。周りから見ていると、「すごく頭が良いなぁ」「知能が高いなぁ」「頭の回転が早いなぁ」と感じることができると思います。でも、周りから見ていて、そういう人が「偉い」と言えるかというと、それは一概に言えないことがある。大半の人は知能で終わっていると思います。

一方、これは非常にあいまいな表現になってしまうのですが、我々が「この人、凄いなぁ」と感じる人というのは、「知能」を備えたうえで、「知性」を使っている人だと思うんです。そこでは「目的意識」というものが問われる。「知能」は高いけれども、「知性」を感じられない人というのは、目的の持ち方が間違っている、目的のつくり方がズレている。つまり、「何のために知能を使うのか」ということが間違っている。

たとえば、官僚の方が悪いことをして辞任したりとかいうことがありましたけれども、あの方々も知能は、もの凄く高いはずなんです。なぜかと言うと、東大を出て官僚になって、それで事務次官いう公務員のトップにまで上りつめた人ですから...、でも、結局、知能の使い方が間違っている、自分の優秀な知能を、自己保身のために使ってしまっているわけなんです。もっと世の中のために役に立つことに、その高い知能を使った方が、結果的に自分の身を守ることになるのになぁと思うのですが・・・ですから、知能は高くなくても知性が高い人の方が、学校は出ていなくても何か凄いことをやったりとか、ということになってくるのではなかろうか・・・。本来は、知能が高くて知性の高い人が、正しい知性の使い方をしてくださったら良いんでしょうけれども、そうではないのかなと思います。知能というものを正しく使う。「AI にできなくて、人間にできるものって何でしょう?」と考えた時に、私はそこに行き着くのではないのかなと思っています。

ですので、これも、知能が高いことや、演算処理能力が高いことを悪いことだとは決して捉えない方が良いと思います。それを自分でコントロールするための、知性を持てば良い話であります。

 

☑「読解力」を高める方法

AIがどんどん幅を利かせて始めてきている環境に適応していくためには、ひとつは「読解力」が重要だと言われています。つまり、「読解力」を高めることがAIに仕事を奪われないためには、ひとつ必要になってくる。

では、読解力を高めるためには何をどうしていくべきか?・・・たくさん本を読めば読解力は高まるのか?でも、たくさん本を読んでおられたり、本を読むことが決して嫌いでない人でも、読解力が不足しているなぁ、という方はいらっしゃいます。読解力が不足している、つまり、「表層的な理解」で終わってしまう人、本を読むことが決して嫌ではないんだけれども、どうも本質を理解しておられないなぁ、という人というのは、なにかと言うと、自分が読んだ内容を他人に説明することができない人なんだろう、と私は思います。

 

これは私ごとなんですが、 私は本を読むのが遅いですし、本を読む冊数というのは、「いやいや、中村先生、たくさん本を読んでらっしゃるじゃないですか?」と言っていただくこともありますが、私がしている、コンサルティングという仕事を生業としている人間からいくと、読んでいる本や、目を通している雑誌というのは、ものすごく少ないと思っています。というのは、私は「本に書いてあることをきちんと理解して他人に説明ができないと嫌だ」という達なので、本を読むと、ものすごく疲れるんです。私はもともと研究者でもないですし、学者でもないですから、本に書いてあることを皆さん方に説明しようと思うと、自分自身が理解できていないと説明ができないんです。だから本を読むと、ものすごくエネルギーを使うし、ものすごくシンドイんです。ですから、新幹線で移動しているときに本を読んでいる方がたくさんいらっしゃいますが、私にはああいうことはできないんです。私は、その本を読むためにちゃんと机に向かって本を読まないと、理解ができない人間なんですね。

それは何かと言うと、実際は他人に説明をしなかったとしても、他人に説明をするという前提を持って本を読むんです。手前味噌になりますけれども、他人様に話ができたり、また、「中村先生は、ものすごく論理的に物事を考えていますよね」とか、「他人の話をしっかりと捉えてきちんと返してきますよね」と、おっしゃっていただけるのは、ここの部分「読解力」を重要視してきたという意識があります。ですので、私は、読解力というのは書いてあることを他人様に説明すること、これが読解力を上げる方法になるのではないかと考えています。これは、自分自身の経験から申し上げていることです。ですから、単に本に書いてあることをそのまま受け売りで話をするのではなくて、きちんと相手が理解できるよう説明ができるように読むと、それは読解力が上がる方法になるのではないだろうかと、自分の経験から思います。

そして、聞いたことや読んだことが自分の言葉にできない、ということは、自分自身がきちんと理解をしていないというところに繋がっていく。たくさんの方に「それは、そうだよね」「そういうことだよね」と思っていただけること、本を読んでいない人に対しても、本の内容を理解していただく、納得していただくことが私の仕事として必要なわけです。なぜかと言うと、例えば、コンサルティングや教育というのは、私が話していることが本を読めば分るレベルであれば、「この本を読んでおいてください」で進む話なんです。その方々がその本を読まずとも、私の話を聞けば、理解をしてもらえるというふうにするのが私の仕事ですから、他人様に理解をしてもらうために、いろいろな理論であったりとか、他人様の言ってることを私は勉強をする訳なんですね。

 

ですから、例えば、いわゆる、士業(さむらいぎょう)であっても、お客さんに説明をする。「税法ってこうなっていますから、御社ではこうなります」とか、「労働基準法ではこうなっていますから、こういうことになります」ということをお客様に説明をする、説明ができる人というのは士業でも生き残っていけるのではなかろうか・・・。逆に、丸々、事務処理を請け負っているだけというのは 、AI に仕事を代替される日が近い将来やってくるのではなかろうか、と思いますね。たとえ事務処理の部分は、AI に任せたとしても、AI では他人様に説明ができないですから、お客様に説明をして、納得をしていただくことが必要になる。お客様の方も、今までは「処理をしてくれれば良い」というところから、処理だけであれば誰でもやってくれる、それを我々にきちんと分かりやすく説明をしてくれる、提案をしてくれる人を、弁護士の先生や、会計士の先生、税理士の先生、社労士の先生とか、司法書士の先生に求めていくことになっていくんではなかろうかと思いますね。

 

☑ 失敗を直視すること

AI がどんどん進化していっているのも、ノーベル賞を取られるような方がああレベルまで行き着くのも、失敗というものを直視することが非常に重要になっているのだと思います。人間誰しも失敗というものを見るのは嫌なわけです。うまくいかないこと、ムカムカすること、頭にくること、というのは気分的に嫌なことです。アンガーマネジメントということが、ここ何年か言われてきているんですが、そうした感情を見ないようにしたりとか、感情に蓋をしたりしてしまっては、私はダメだと思います。失敗をどうプラスに変えて行くか? 人間というのは、痛みとか不安とかイライラを感じている時というのは、何らかの「気をつけなさいよ」というサインを受け取っているんだということ。「先天性無痛症」の方は痛みを感じないまま、ずっと動き続ける、骨折した状態でも動き続けてしまう。痛みを受け止めなかったら大変なことになってしまうわけですね。痛みを受け止めた時に、どうするか?ということが非常に重要になってくると思います。じゃあ、その痛みを、見て見ないふりをする、または、痛みをしっかり痛みとして受け止めるのか、によって状況は変わってくる。今、私たちは仕事で骨折をするなんていうことはないですけれども、例えば、苦言を呈されたりと、嫌なことがあったりとか、思うようにならなかったりとか、ということを、どういうふうに直視をして良い方向に持っていくか?ということが、結果的に AI に負けない方法になるんだろうと思いますね。 どうしてAIに負けない方法になるかと言えば、AIは疲れず、へこたれず、諦めないからです。嫌なことや、ムカムカすることにも正面から向き合うということがその第一歩になるのではないか。ダメなところを見て見ぬふりするとか、自分の都合の良いように解釈を曲げるというのが一番駄目なんじゃないかと思いますね。

 

☑「読解力」とは「聴く力」だ

コミュニケーションにおいて一番重要なことは傾聴、相手の話を聞くということだということを繰り返しお伝えしてきたと思います。

2018 R1グランプリで優勝した濱田祐太郎さんは、視覚に障害を持つ芸人さんです。濱田さんは何も見ることができないんです、聞くことしかできないんです。けれども見ているように話をされます。しゃべらはるんです、見えておられないですから、実際は見たことのないことを、実際に見たことがある人々が納得がいくよう話されるんです。濱田さんは文字を読めないんです。でも、世の中のことを理解できているんです、すごく理解しておられるんです。でも、話をしていることというのは非常に的を得ているし、自分のネタを披露されるとき、その話芸は、「本当に、この人、目が不自由なんだろうか?」と思うくらい、見ているような情景描写や、見ているような話の仕方をなさるんです。つまり、濱田さんを見ていると、聴く能力があれば、いろいろなことを理解していけるんだということが分かるんです。濱田さんは、実に、状況をきちんと把握しているんです。一方、私たちは目も見えているし、耳も聞こえているのですが...。濱田さんは目が見えていないのに、情景をきちんと理解しているから、しゃべることができるんですね。ということは、聴くだけでそこまでの情景描写ができるということを濱田さんは証明してるんだと思います。逆に、我々は五体満足なのに、だからころ手を抜いているんだと思います。濱田さんは耳しか聞こえないから、耳や、他の感覚を研ぎ澄ませて、いろいろな状況を把握しようとするから、つまり自分の持っている能力を最大限に発揮しようとするから、そこまでできるんだろうなと思います。

何が言いたいかと言いますとね、「読解力」というのは一体何なんだろうと考えていた際に、一つはやはり「読む」ということ以前に「聴く」ということの重要性。字を読めない人というのは、日本の場合、識字率というのは高いですけれども、昔の日本人の人というのは文字を読めない人も、たくさんいらっしゃったわけですけれども、社会生活をきちんと営んでいたということは、普段の社会の中できちんと聴いて、その状況を把握する能力は備わっていたということです。他の国においても、識字率が低くても社会が成り立っているというのは、基本的には耳でその状況を把握したりとか、言葉を聴くということをしたりとか、相手の表情からものごとを読み取っている、そういったことをするから、きちんとしたコミュニケーションが取れている、こういうふうなことに繋がるんだろうと思います。「話し上手は聴き上手」「聴き上手は話し上手」であるということを、コミュニケーションの講義のなかでお話をしました。この濱田祐太郎さんも、世の中の状況をきちんと把握できるからきちんと説明ができる、おそらく人の話をきちんと聴いているから、「こうやって話をしたらわかりやすいなぁ」「ああやって話をしたら笑いがとれるかも知れないなぁ」ということで話が上手になっていかれたのではないかと思いますね。

 

ですので、読解力を高めようと思うと、他人に話をきちんと伝える、分かりやすく伝えるということをやっていくということと合わせて、聴くということをもう一度見直していく必要があるのではないだろうかと思いますね。聴くということは採点することができなくて、聴いたことを自分の言葉で説明ができるかどうかで聴けているかどうかが判断できるわけですね。そうすすと、相手にきちんと説明をする能力というのを高めていくということが、結果的に聴くとかと 読解力を高めるということに繋がるんだろうと思うわけなんです。

 

 

▼ 次回までの課題ご説明

1.「受講報告書」について

ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。

この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。

究光塾開催の翌週の月曜日(11月5日)を最終納期でお願いいたします。

2.「振り返り」をメーリングリストにて、直接、全メンバーに送信してください。

平成30年11月4日(日曜日 23時59分59秒)を期限として送信をお願いいたします。

①   本日の内容から得たこと 

②   (今月の参加により)取り組むことと決めたこと【エクセルファイル】

「顧客の増加を前提とした売上の増加」を実現するための

     1.組織レベルの業務に直結するもの

     2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

③   その他(感想、質問、講師について等、自由に。ただし必須)

 

3.ご自身に対する他の受講メンバーからの『相互フィードバックシート』のコメントへのフィードバック(返信・回答)

についても、上記2同様、11月4日(日曜日 23時59分59秒)を期限でお願いいたします。

 

4.平成30年11月18日(日曜日 23時59分59秒)提出期限の課題について

A)    『読後リポート』

B)    上記課題図書に関する 「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる課題と解決策の検討(3項目)

C)    これまでに設定した取組課題【エクセルファイル】についての進捗状況・振り返り

 取組課題【エクセルファイル】は、2種類です。

 ①     課題図書から抽出した「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる

 課題と解決策(3項目)

 ②     (今月の参加により)取り組むことと決めたこと

      「顧客の増加を前提とした売上の増加」を実現するための

      1.組織レベルの業務に直結するもの

      2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

< 第二十七回 究光塾へ続く・・・ >

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