究光塾リポート

第十九回 究光塾リポート

2018年04月18日

<第一九回 究光塾 実施内容(流れ)>

1.マネジメント講義

2. 『顧客を増やして売上を上げるための取組み』について

3.次回までの課題 ご説明 

 

講師 中村よりお伝えしたこと(抜粋)】

 

 

◆ 人事評価の目的は・・・

 

人事評価の目的は、その人物の能力をしっかりと把握することです。 仕事の成果や目標の達成状況をお給料に正しく反映させることではありません。

「当社において高く評価するのは、こういう能力を持っている人ですよ」と明示することであって、それをお給料に反映させるかどうか(=給与・処遇制度)ということは、別の問題です。

とくに中小零細企業の場合、お給料というのは、別に給与制度がなくても、その会社で権限を持っている人が決めたら良いこと、現実的にはそれだけの話です。私はそう考えています。どうして大手企業が細かな給与制度を整えているかと言えば、そういった細かな制度を作らなければ、何千人という従業員規模になってくると、管理ができないからです。しかし、何十人の従業員規模ならば、経営者や幹部層がしっかりと従業員さんのことを見れば良いだけの話です。あとは総額管理をきちんとしていれば良い。

人事評価というのは、それとはまた別でありまして、「当社では従業員に対して、こういう要素を求めていますよ」ということを明示するには良いことかもしれません。しかしながら、あまりにも人事評価を御神体にして、うまくいっている会社は残念ながら無いです。どういうことかと言いますと、これは私のこれまでのコンサルティング経験から申し上げていますが、二代目以降の経営者は人事評価制度をつくりたがります。なぜかと言うと、自分自身にリーダーシップがないから・・・評価をすることによって部下をコントロールしたいだけの話なんです。そもそもリーダーシップを発揮できない人が、評価制度をつくることによって、自分の言うことを聞かせようとすることになりかねません。それは部下から見ると「お給料を握られている...」こうなるわけです。たとえば、今回、詳細までは私も分かりませんが、公文書が改ざんされた理由というのは、内閣が官庁の上層部の人事権を握っているからじゃないか?という説があります。だから、違法行為というようなレベルじゃないことまでやってしまう。今の国の官僚制度の状態を自社に置き換えて見た場合、それが果たして良いことなのかどうなのか、を考えてみていただくと良いと思います。

人事評価制度のまえに、リーダーシップというものを明確にしていかないと話になりません。昔からよく言われる言葉ですが、「経営者の器以上の人間というのは、その会社にはいない。経営者の器以下の人間しか会社には残らない。」というのは、要は、経営者が社内の人間をコントロールできるかどうかできないか、それだけの話なんです。それが出来ないから、人事評価制度を使って...というのは一番良くありません。人事評価制度をつくること自体は良いことだと思いますが、それが御神体になるのは良くないですよ、ということであります。

あと、人事評価制度に関して、人事評価制度では、「保有している能力」を評価するのではなく、「発揮している能力」を評価しなければなりません。昔、小学校や中学校の三者面談などで、教師から「○○君は、やったらできるんですけどね...」というフレーズがよく発せられました。この「やったらできるんですけどね...」というのは、つまるところ、「できていない」ということですよね。では、会社において、「やったらできるんですけどね...」ということで良いか?ということなんです。評価というのは、「やったか」「やらなかったか」です。ですから、会社・仕事において、「発揮した能力」を評価することが必要です。どれだけメジャーリーグベースボールで凄い成績を残して、鳴り物入りで日本球界にやってきた外国人選手であっても、日本のプロ野球で成績が振るわなかったら評価はされない、これと同じことです。

 

◆ 「顧客の創造」について

今年の1月から、私から、「『顧客を増やして売上を上げるための取組み課題』というものを考えてください」というお願いをするようにいたしました。かつ、直近においては、「その根拠を明確にしてください」ということもお願いをするようにいたしました。皆さん、ご協力いただき、ありがとうございました。

どうして「顧客を増やすことを通じて売上を増やすのか」を考えてください、と私が申し上げたかと言いますとね・・・

まず、私は、「新規獲得をしてください」とは一言も言っていません。もともとは、「顧客の創造(のための取組み課題)」と申し上げていましたが、それでは皆さん方にとっては曖昧だと判断したので、「顧客を増やしましょう」という表現にし、それでもまだ曖昧だったので、「顧客を増やすことによって、売上を増やしてください」とお願いするようにしました。あくまでも、「顧客を増やす」というステップを踏んでください、ということを申し上げてきました。

 

「顧客の創造」ということについては、これまでの究光塾のなかで、こういうことをお伝えしてまいりました。

 

 

『マーケティングとイノベーションは、企業の二つの基本的な機能である。顧客の創造は収入をもたらす、この顧客の創造こそがマーケティングなのである。そして、新しい次元の活動の創造もまた収入をもたらす。これがイノベーションである。その他はすべてコストセンターである。』 (P.F.ドラッカー)

 

ここでドラッカーが言っているのは、企業の目的は顧客を創造することであり、顧客の創造を実現するために必要な機能はマーケティングとイノベーションだけなんですよ、ということ、その二つ以外の機能は全てコストなんですよ、ということです。イノベーションについては、お話しする機会をまた改めますが、マーケティングについては、マーケティングこそが顧客の創造なんですよ、ということであります。 世の中で、「マーケティング」「マーケティング」という言葉が頻繁に使われておりますが、本当に「マーケティング」の意味を分かって使っておられる方は非常に少ないと思っています。

 

まず、マーケティングの定義としては、コトラーという人が、大体、現在のマーケティングに関することのベースをつくられた方だと言えます。

『マーケティングとは、個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである。』(フィリップ・コトラー)

 

そして、マーケティングの目標ということを、ドラッガーが言っているんですけれども、

 『マーケティングの究極の目標は、販売を不要にすることだ。』 (P.F.ドラッカー)

マーケティングの目標は、販売を不要にすること、売れていくお膳立てをすることです。

つまり、販売活動をしている時点でマーケティングができていないということなんです。ここでのポイントとして、「販売」というのは、売り込むこと、つまり、売り手側からの働きかけなんです。一方、「マーティング」というのは、売れていくんです、つまり、買い手の自主的な行動なんです。そういった意味で、皆さん方の組織で、当社はマーケティングができている、当社は売り込みに行かなくて良い、売り手の論理でやらなくて良い、というところはあるでしょうか?

 

そして、売り手の一方的なプロモーション手段ではなくて、買い手のニーズや欲求を充足させるための働きかけ、これがマーケティングですよ、ということであります。私が、皆さん方に「取組み課題として考えてください」と申し上げているのは、顧客の創造ということなんですが、皆さん方からご提出いただく取組みは、残念ながら、「自分たちがどう売るか?」という取組みの範囲を超えないものばかりです。

それは何故か?・・・

そもそもが、「ニーズ」や「欲求」という言葉を理解できていないからだと思います。「ニーズ」の本来の意味というのは、「欠乏感」です。「ニーズ」とは、お客さんが必要とされていることだ、と思っておられる方が多いのですが、そうではなくて、「ニーズ」とは「欠乏感」なんです。

たとえば、そもそも洗濯は何故するのでしょう?・・・「汚れをとるため」。でも、そもそも、どういう状態であるのが一番良いのでしょうか?どうなれば、皆が幸せになるのでしょうか?・・・「汚れない」状態であること。これが一番良いと考えられますね。ですが、洗剤メーカーは、「うちの洗剤は泡切れが良いんです!」「うちの洗剤は油汚れに強いんです!」ということを働きかけていますよね。そもそもは、洗濯なんてしたくない、汚れが付いてほしくない、というのが本来のニーズなんです。汚れのつかない繊維を開発したら、洗剤も何も要らないわけなんです。「泡切れが良い」「油汚れに強い」といったことは、売り手側が自分たちの都合や論理に合わせさせているだけでしょ、ということが考えられるんですね。

たとえば、ホテルもそうです。私は仕事柄、ホテルによく泊まります。シーズンインで、ものすごく客数が多くて、騒がしいときほど、ホテルの宿泊費は高くなります。客数が多くなれば、売上・利益があがるわけですから、逆に宿泊費を下げることだってできるはずです。果たして、これが、顧客のニーズを満たすことになっているでしょうか?・・・全部、売り手の理屈、つまりは販売活動なんです、マーケティングでも、顧客の創造でも何でもない。新幹線でもそうです。季節料金といって利用者が多くなる時に限って高いんです。それは「高いのが嫌だったら乗るな」「乗りたかったら、この金額を払ってくださいね」という話なんです。それって本当にマーケティングや顧客を作ろうとして商売をしている人たちの立場なんでしょうか?売り手の理屈ですよね、私はそう思います。

ここでくれぐれも勘違いしていただきたくないのは、私は「販売」のことを悪く言っているわけではない、「販売」を否定しているわけではない、ということです。私が皆さん方にお伝えしたくて、申し上げているのは、「顧客の創造 イコール マーケティングなんですよ」ということです。

 

そして、「欲求」というのは、「ニーズを満たしてくれるモノ(価値)を求めること」なんです。

先程、洗剤のお話をしましたけれども、私は洗剤が全て悪いと言っているわけではなくて、極力、洗濯に手間をかけたくない、だから、泡切れをよくしたりとか、二度洗い三度洗いしなくて良いように、油汚れを一回の洗濯で取ることができたり、少量の洗剤で取れるようにしている。でもそれが、「洗剤をたくさん使ってくれる方が、もっと売上あがるよね」ということになれば、それは決して、ニーズを満たしているわけでもなく、欲求を満たしているわけでもなくなります。

 

こで次に、「需要」という言葉が出てきます。「需要」というのは、「欲求と購買力のバランス」のことを言います。たとえば、「速くて、安全に、格好良く移動したい」という欲求があるとしましょう。それで、フェラーリという車を開発して売ろうとしました。でも、フェラーリを買える人って、世界に何人いるでしょうか?ということですよね。そうすると、自分たちができる「ニーズ」を満たすモノや価値、自分たちができる「欲求」を満たすモノや価値を提供していくとなると、どういうような「欲求と購買力のバランス」で、価格設定をするのが妥当なのか?ということを考えていくことになります。

そこで、人の足元を見ているでしょ、というのが、繁忙期だから料金を高くしますよ、というところであり、それはマーケティングではなくて販売なんですよ、ということであります。でも、たとえば、東海道新幹線なんかは、東海道新幹線しかないので、私だって乗らざるを得ないんです、文句を言いながらも・・・。皆さん方の会社においても、お客さんが文句を言いながらも、「それでしようがないよね...」と言ってもらえる、その価値があるものなら、それで良いと思います。でも、これも世の中がどんどん変化することによって、衰退していった事例というのもあるわけです。

このように、まず「ニーズ」「欲求」「需要」ということを考えないと、マーケティングにはなりませんよ、ということであります。で、また、ここには、「プライシング(価格設定)」というものがありますから、「全部タダでやりなさい」「無料でやりなさい」と申し上げている訳ではないです。

 

 

◆ 「販売志向」と「マーケティング志向」

 

『マーケティングというのは、ターゲット(標的)市場のニーズや欲求を明らかにし、求められている満足を、競合企業よりも効果的かつ効率的に供給をしていくこと。』(フィリップ・コトラー)

このように、コトラーは言っています。

ここでは、「競合企業に勝ったら良いんでしょ・・・」というだけではなくて、「市場のニーズや欲求を明らかにする」というところが重要です、ここができていないことが多いです。

 

 

『マーケティングと販売は、字義以上に大きく異なる。販売は売り手のニーズに、マーケティングは買い手のニーズに重点が置かれている。販売は製品を現金に替えたいという売り手のニーズが中心だが、マーケティングは製品を創造し、送り届け、最終的な消費まで関連する諸所の活動を統合しようとすることによって、顧客のニーズを満足させようというアイデアが中心である。』(セオドア・レビット)

 

上記は、「販売志向」と「マーケティング志向」との違いを、セオドア・レビットという人が言っています。

販売志向というのは、自らの製品を現金に替えたいという販売者のニーズだけを考えています。つまり、「売上だけ上げる」というのは、自分たちの製品やサービスを現金に替えたい、それが「売上だけ上げる」ということなんです。でも、ドラッガーの言葉で言うと、「マーケティングとは顧客の創造」ですよということ、「現金に替える」とは一言も言っていなくて、「お客様を増やすということ」なんです。

 

ですから、私が皆さん方に考えてくださいね、とお願いしているのも、「販売を強化してください」というお話をしているわけではないんです。マーケティングと申し上げても、なかなかイメージが付きづらいだろうということで、「お客様を増やしましょう」「顧客を創造しましょう」と、ドラッガーの言葉を借りて申し上げているんです。

そして、マーケティングというのは、消費していただいた後まで追い掛けます。「販売して終わり」「現金と交換して終わり」というのは販売なんです。その前のことから、その後のことまで、全部の責任を取っていくのが本来のマーケティングですよ、ということであります。私が何をお伝えしたいかと言うと、これまで自分たちが考えていたことは、販売志向なのか、マーケティング志向なのか、ということをもう一度振り返ってみてください、ということであります。

 

そしてもう一つ、「自社のお客様というのは、自社の写し鏡」だと言えます。自分たちレベルを上げないことには、お客様のレベルは上りません。それもお客様をフワッと捉えるのではなくて、具体的にどんなお客様なのか? を明確にしていくと、そのお客様に対して何をさせていただくとそのお客様は喜んでくださるのか?ということになり、それを実現するためには具体的に何をしなければならないのか?ということを考えるようになる。これが顧客をつくることになります。

ただし、今、こうしてお話をしていることは、一朝一夕にできることではないです。今日・明日すぐにできることではない。でも、こういう考え方をしていかないと、企業の存続発展には繋がりませんよ、ということであります。

自社の立場に立つと、制約条件がたくさんあって、「いやいや。そうは言うけれども、そんな簡単にできませんよ...」となりますが、自分がお客様の立場に立って考えてみてください。自分なら、その会社からモノやサービスを買うか?この観点を持っていただくことが重要になると思います。

 

 

< 次回までの課題ご説明 >

1.「受講報告書」について

ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。究光塾開催の翌週の月曜日を最終納期でお願いいたします。

 

 

2.「振り返り」を全メンバーにメール送信してください。

 5日以内(3月31日 土曜日 23時59分59秒まで)の送信をお願いいたします。

 ①本日の内容から得たこと 

 ②今月の参加により取り組むことと決めたこと 

 顧客の増加を前提とした「売上の増加」 を実現するための

     1.組織レベルの業務に直結するもの

     2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

 ③その他(感想、質問、講師について等、自由に。ただし必須)

 

3.ご自身に対する他の受講メンバーからの『相互フィードバックシート』のコメントへのフィードバック(返信・回答)

 についても、上記1同様、5日以内(3月31日 土曜日 23時59分59秒まで)でお願いいたします。

 

4.平成30年4月15日(日曜日 23時59分59秒まで)提出期限の課題について

 課題図書『失敗の本質』に関する

 「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる 課題と解決策の検討(3つ)

 の進捗状況

 

・・・・・< 第二十回 究光塾につづく >・・・・・

前のページに戻る