2017年05月05日
1.先月の振り返りレポートにて設定した取組み課題について
2.先月の講義内容の振り返り
3.講義
4.論語
5.次月までの課題について
今回の究光塾では、まず、前回の究光塾終了後、受講者本人が設定された取組み課題について、各自、振り返りのコメントをしていただきました。
【講師 中村より】
何故、今回、冒頭に、このような振り返りのコメントをしていただいたか?と言いますと...
この究光塾が始まって以来、皆さんには、ご参加後、振り返りをしていただいて、そこから「それでは、学んだ内容を生かして、何をしていくのですか?」ということを課題として設定していただき、「次月はその振り返りをしてください」ということを、半年以上続いてまいりました。
そして前回、「SMARTという観点を入れて考えていきましょう」とお願いをいたしました。私が皆さん方に期待している「あるべき姿」を100とするならば、現状、出来ている人・物足りない人、全メンバーを平均して点数を付けるとするならば、50点に到達していません。
折角、こうして毎月、取組み課題をしていただいています。そうすると、1年で12回、「業務面」と「個人の成長に繋がるもの」ということで、年間24個の取組み課題が出てきます。年間24個の課題に取り組むとするならば、かなりいろいろなことが変わってくるはずなんです。
しかしながら、たとえば、「今月できなかったので、来月も引き続き取り組みます...」というようなことを許していくと、年間24個どころか、年に10個も行かないようになっていく可能性もあるわけなんです。たとえば、「3ヶ月スパンでやります」とか「半年スパンでやります」という具合に...。
それであれば、この1ヶ月で出来ることを明示していただくべきなんです、こうすれば、これは具体的になっていく、SMARTになっていくんです。また逆に、「この1ヶ月できなかったので、来月も引き続き取り組みます」ということは、この1ヶ月でできなかった原因をしっかり振り返っていただければ、手段ややり方、その提示方法が変わってくるはずなんです。「今月できなかったので、来月も引き続き取り組みます...」というような、キャリーオーバーをやっていてはいつまで経っても実行に移せません。原則、キャリーオーバーは認めません、目指すところは同じで良いですが、手段・やり方を変える、目的を変えるなど、実行することを念頭に入れて、取組み課題を設定するようにしてください。
論理的にものごとを考える、という言葉があります。また、ロジカルシンキングという言葉を聞かれたことがあるかと思います。「論理的とは?...」いうことで、論理学の有名な先生(東大の名誉教授でいらっしゃいますが)、その方の書籍を読んで非常に印象に残っているのは、『論理的』とは言葉を正確に使うことだということです。ですから、言葉の意味であったり、定義であったり、根拠を明確にすることを、私は繰り返しお伝えするようにしています。
そして、「論理的な思考をする」とか「論理学」とか、そういった論理に関するさまざまな書籍を読んでいきますと、共通して書いてあることは、論理的に考えるとは、頭の筋肉を付ける、頭に筋肉をつけること、つまり、論理的に考えるとは、「あの人は元々、頭の出来が違うから・・・」とか、「あの人は、元々、知能指数が高いから・・・」とか、そういうことではないんです。知能指数が高い人が、皆、論理的に話ができるかと言えば、決してそうではなくて...。むしろ天才というのは、いろんな思考をすっ飛ばして答えが分かるから、周りから見ていると、決して論理的に考えているようには思えないところがあります。
たとえば長嶋茂雄さんというのは、バッティングに関していわゆる天才的な感覚を持っておられて、どうやってボールを打つのかと言われて「来たボールをパーンと打ち返すんだ」と打ち方を説明されるんですが、周りの人間からすると、「パーン」と言われても「???」なわけなんです。でも、その説明で打てる人が天才なわけなんです。逆に凡人はどうすれば打てるかと言いますと、イチローの事例が使われることが多いんですが、イチローというのは1年間で打ったヒットというのを何故打てたか、全部説明できるそうです。つまり、凡人ほど、論理的にものごとをしっかり考えないとダメですよ、ということです。論理的に考えるというのは、頭の筋肉を使うこと。つまり、筋肉と同様、鍛えれば鍛えるほど、論理的な思考ができるようになりますよ、ということなんです。
そして、人間の身体に例えて言うならば、元々、筋肉質の人、大して筋トレせずとも、筋肉が付いている人がいるわけです。元々、論理的にものごとを考えたり、話したりすることができる人もいるわけです。一方、元々、筋肉のない、筋力の付きにくい人というのは、身体を鍛えて筋肉を付けるということをしなければならない。つまり、「自分は論理的な思考ができないなぁ」という人ほど、筋肉を付けるように、論理的な思考を身に付けていかないといけない、こういうふうに考えていただきたいと思います。
本当の「論理的」というのは、理屈ではありません。本当に論理的に話すことができる人は、分かりやすく、聞きやすい話し方をなさります。「聞きにくいなぁ」「なんか理屈っぽいなぁ」と感じる人というのは、決して論理的ではありません。論理的に話をしている人の話というのは、突っ込みどころがありません、「その通り」「おっしゃる通り」、グウの音もでない。逆に、いろいろ反論されるというのは、実は論理的に話ができていないからだと言えます。ですから、「理屈っぽいなぁ」というのは、論理的でも何でもない。分かりやすい言葉を使って、的確に言葉を使うということが論理的に話すということなんです。
そして、「自分は身体が貧弱なのでどうせ無理だよ」=「自分は論理的になんてなれないよ」と思うのではなくて、身体を鍛えて筋肉を付けられるように、思考も鍛えて論理的になることは可能なんですよ、ということをご理解いただきたいんです。そうしないと、他人にものごとを伝えることもできません。他人の言っていることも理解ができない、こういうことになります。そして、SMARTの観点であったり、取組課題というのは、論理的にものごとを考えていただく第一歩なんですよ、ということです。
また、私が学んだことがある、人間の個別的特性の理論(当時、アメリカ海兵隊の組織編成に使用された理論)において、論理的な人と論理的でない人の特徴としては、こういうふうな説明をしていました。「事実と憶測をきちっと分けることができる人が論理的な人であり、事実と憶測を混同してしまう人が論理的ではない人である。」たとえば、新聞やニュースを見ていて、これは事実だ、これは憶測だ、ということが分かる。「〇月〇日、殺人事件が起きました。(これは事実)」「犯人の動機としては、どうも被害者への恨みを持っていたようです。(これは事実であるかどうかはわからない)」論理的な人は、これを分けて捉えている。論理的でない人は、分けて考えられない、ごっちゃにして考えてしまう。論理的に考えられない人は、何でもかんでも、ごっちゃごっちゃになって考えてしまうから、思い込みであったり、感情で話してしまう。だから、論理的でない人、ごっちゃにしてしまう人が話している内容は、聞いていても分かりにくいんです。ですから、論理的に話そうと思えば、事実と憶測、事実と感想を分けることです。そして、これを分けることは訓練すればできることなんです。
※ 『SMART』という観点について をもう一度、確認しておきましょう。
S pecific |
= 具体的に、明確に |
M easurable |
= 測定可能な |
A chievable |
= 到達(達成)可能な |
R ealistic |
= 成果に基づいて(現実をみた) |
T ime bound |
= 期限付き(時間の縛りを効かせた) |
「Specific」とは具体的であること。
5W1H(6W3H)を明確にすること、
他人(第三者)が見ても理解できる、イメージできること。
「Measurable」 のポイントは、
目標達成が測定できる、第三者でも測定できるものであること。
「Achievable」 のポイントは、
難解すぎることなく、かと言って簡単にできるものでもないこと。
「Realistic」のポイントは、
達成プロセスではなく、達成したい成果に基づいた設定であること。
「Time bound」のポイントは、
期限を明示する、必要であれば、中間の期日を設定すること。
インターネットの活用には、十分に気を付けていただきたいと思います。上述したように、インターネットでは「事実と憶測」というものが分からない、区別がつかなくなってきています。最近は、新聞に書いてあることも本当のことなのかどうなのか、わからなくなってきています。事実なのか、憶測なのか、この人の思い込みなのか?ということを、しっかりと判別していただくことが大事です。
今回、再度、取り組んでいただく『バカの壁』ですが、バカの壁を、食生活に例えるなら、自分の食べたいものだけを食べて生きている、自分の知りたい情報しか要りませんよ、という状態です。ですから、肉体と同様、蝕まれていく、こういうイメージを持っていただくと良いと思います。
こういう実験があります。生まれたばかりの子猫に、縦の線だけしか見せずに育てて、テーブルの上に置いてやると、テーブルから落ちてしまいます。これは横の線が認識できない、横の概念がないからなんです。人間の思考も同じだと言われています。バカの壁(=自分はこれしか見ない)があるとオカシナ方向に行ってしまいます。狼に育てられた少女というお話がありましたが、これも同様です。狭い範囲内だけ、つまり、バカの壁に囲まれた範囲内で生活をしていくと、大人になっても危険な対応もできなくなっていくということです。
皆さん、インターネットで検索したり、インターネットで閲覧した記事、これらすべてデータ収集されています。そしてAIなどを駆使して、インターネットの画面には、「あなたへのお勧めの記事」とか、そういった傾向のものしか現れなくなってしまうんです。つまり、自分が今まで触れていないものは、身の周りからなくなっていくわけなんです。
たとえば、書店に行って本をいろいろ見て回ると、普段自分が関心のなかった本も見るようになりますが、インターネットだけで書籍を購入していると、自分が購入した傾向の書籍しか出てこなくなる、つまりバカの壁がどんどんどんどん高くなっていくわけなんです。
「自分たちの事業のライバルを何だと捉えるか?」ということが、今後、より重要になってくると考えています。
たとえば、こういう記事を読みました。横浜DeNAベイスターズの横浜スタジアムに、観客、お客さんが入るようになったと。その記事にあったのは、球団として、「我々は、スポーツマネジメントをやっているんだ」とか、「他のチームよりも何とかファンに球場に来てもらおう」と考えて球団運営をやっていたけれども、そうではなくて、我々のライバルは人の集まる所なんだ、たとえば、東京ディズニーランドであったり、横浜中華街であったり、そういったところを自分たちのライバルだと捉えて、そういったところに行っている人達に、横浜スタジアムに来場してもらうためには、どうしたら良いのだろうか?を考えたことによって、観客が入るようになりました、ということでした。
また、たとえば電鉄会社にお邪魔した際に、こういうお話をお聞きすることがありました。「我々、電鉄グループで儲かっているのは百貨店事業くらいなんです。本業(鉄道事業)では儲からない、なぜなら、鉄道事業は公共のインフラだから...」と。ヤマト運輸の小倉昌男さんは、「我々の事業は、単なる運送業ではないんだ、社会のインフラ事業なんだ。」「世の中のインフラ事業なのだから、先に利益を求めると絶対に良いことにはならない。先に投資をして、網をきちんと張りめぐらせたうえでやっていかないとダメな事業なんだ。自分たちの利益ばかりを考えていてはダメなんだ。」ということをおっしゃっているんです。
つまり、たとえば理美容業であれば、隣の理容室や美容室がライバルなのではなくて、髪の毛をカットするということだけではなくて、もっと広い範囲で我々のライバルは何なのか?ということを考えてみる。つまり、自分たちがライバルだと思っていないようなところに、自分たちのお客様が居るんだという発想を持っているところが生き残っていく。
たとえば運輸・運送業であれば、「モノをA地点からB地点に運んでいるんだ」と考えるだけではなく、「我々の事業は社会のインフラ事業だ」と捉えなおしてみる。そうすると、自分たちのやるべきことというのは変わってくるのだろう、と思います。
「考えるのが面倒くさいなぁ」と思っていると、絶対にこういう思考には行き着きませんし、発想も生まれてきません。「自分たちは何をやるのか?」ということを、理念とかに基づいて考えていただくことが重要になってきますし、また、自分たちの業界だけに目を向けていても、もうダメな時代になってきていると思います。ビジネスのヒントというのは、自分たちのビジネスとは違うところ、遠いところにある。こういう観点を持っていただくことが重要なのだろうと思います。
◆ 「問題とは?」
あるべき姿と現状とのギャップを問題と言います。
我々が問題を感じるときというのは、何かギャップを感じているときに問題だと思うわけです。ギャップを感じていなければ問題だとは感じない。
同じ状況を見ても、「問題だと思う人」と「問題だと思わない人」がいるのは、あるべき姿が違うからです。たとえば、我々、京都に住んでいる人間は、ここの烏丸通というのは禁煙だという、あるべき姿を持っていますが、観光客はそんなこと知らないわけなので、烏丸通で平気でたばこを吸っていたりするわけなんです。
たとえば、何か意見が噛み合わないというときも、同じ状況を見ているんだけれども、あるべき姿が違うから意見が噛み合わないということがあるんですよ、ということなんです。
皆さん方がリーダーとして、組織で問題解決をしていこうと思うと、皆が同じ現状を見て、皆が同じあるべき姿を持たない限りは、組織レベルでの問題解決はできない、ということになります。「同じ方向を向く」というのは、皆が同じあるべき姿を持っていてもダメなんです。皆が、「現状」と「あるべき姿」の両方を持たない限りは、同じ方向には向かないですよ、ということなんです。つまり、同じ方向を向かない限りは、皆で問題解決なんか無理ですよね、ということです。ですから、組織において「同じ方向を向きましょう!」というのは、皆が、同じ現状と同じあるべき姿を認識するということが、実は問題を解決していくうえでは重要なんですよ、ということであります。
たとえば、病院でお医者さんが誤診をする。風邪じゃないのに、風邪だと誤診をする。そして、風邪という誤診に対して、「こういうふうにして安静にしておいてください」とか、「この薬飲んでおいてください」とやっても、症状は治らないということが多いですよ、ということなんです。我々は、こうしたときに、「この薬が効かないから、こっちの薬かな?」「あっちの薬かな?」というように、手段を変えようとするんですが、そもそもの問題が違うことがありますよ、ということであります。
問題自体を捉え間違えているわけです。上記の場合、風邪じゃないのに、風邪だと誤診をしている。風邪に対する対策はバッチリなわけなんですが、治らない。「何がおかしいんだ?」ということになるわけです。その状態の方が厄介ですよ、ということであります。
「学而篇」
子貢曰く、貧しくして諂うこと無く、富みて驕ること無きは如何。 子曰く、可なり。
未だ貧しくして道を楽しみ、富みて礼を好む者には若かざるなり。子貢曰く、詩に云う、
切するが如く、磋するが如く、琢するが如く、磨するが如しとは、其れ斯れを謂うか。
子曰く、賜や、始めて与に詩を言うべきのみ。諸れに往を告げて来を知るものなり。
< お伝えした内容 >
è 「切するが如く、磋するが如く、琢するが如く、磨するが如し」
「切」...骨を切って整える、「磋」...やすりで研ぐ、「琢」...玉を磨く、「磨」...石を磨く。
「切磋琢磨」とは、「詩経(=「詩」)に起源を持つ言葉。
è レベル低:少し聞いただけにもかかわらず軽々に判断し、
知ったかぶりをして間違ったことを言ってしまう人
レベル中:オウム返しをする人
レベル高:自分の頭で考え、咀嚼して、ズレていないことを言える人
子曰く、人の己れを知らざることを患えず、人を知らざるを患う。
< お伝えした内容 >
è 周りの人が、自分のことを分かってくれない、認めてくれないと言って僻んでいてはダメ。
è 周りの人が、自分のことを理解してくれない
=自分は『できる人間だ』と思っていること自体が問題である(安岡正篤)。
è 「鉛は鉛。どれだけメッキをしても鉛は鉛である。メッキは所詮、剥がれてしまう。」
「金は金。地中に埋もれていたとしても金の価値がある。
どこにあっても本物には本物の価値がある。」
▼「報告書」について
ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。
この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。
究光塾開催の翌週の月曜日を最終納期でお願いいたします。(5月1日まで)
▼「振り返り」を全メンバーにメール送信してください。3日以内の送信をお願いいたします。
① 本日の内容から得たこと
② 先月の 『本日の参加により取り組むと決めたこと』 の振り返り
③ 今月の参加により取り組むと決めたこと
④ その他(必須)
今回お伝えしたSMARTの観点を用いて、目標設定をしてください。
▼「次回までの課題」について
これまでお読みいただいた課題図書について、先月より、月に1冊ずつ、3ヶ月で3冊を読み返していただくことに取り組んでいただいています。今回5月までの期間は、『バカの壁』(養老孟司)です。再度、「読後リポート」 そして、課題図書を活用した「課題と解決策の検討」に取り組んでください。
ひとつの課題につき、①課題、②実行方法、③達成手段、④目的、⑤期日を明確にしてください。課題として設定した内容のもととなった課題図書内の文章を抽出・抜粋してください。課題として設定した理由を明確にしてください。課題の表現については、今回お伝えしたSMARTの観点を用いて設定をしてください。提出期限は、5月14日(日曜日)でお願いいたします。
第九回 究光塾へ続く...