究光塾リポート

第三十二回 究光塾リポート

2019年05月02日

< 講師 中村より お伝えしたこと 抜粋 >

  

 

☑ 曖昧な言葉は曖昧な思考しか生まない       

言葉を曖昧な認識のまま使っていると、どれだけ考えても曖昧な思考にしかなりません。いわゆる「マジックワード」と言われるものがその代表例です。自分が使っている言葉について、自分のなかにイメージを持っているか?自分の言葉で説明することができるか?を自問自答してみてください。

たとえば、「組織風土」という言葉がありますが、この組織風土という言葉自体に絶対的な定義はないんです。 そうした場合に、「組織風土を改善する」と考えたとき、自分自身が考える組織風土の説明をすることができるかどうか?自分のなかに、「組織風土とは、これこれ、こういうものであって、好ましい組織風土を醸成していこうと思うと、こういうことが必要になります・・・」という明確なものがあるかどうか?ということです。これがないと、言葉を並び立ててはいるんだけれども、聞いていても、実態の掴めない、何かフワッとしたものになってしまいます。

私自身もコンサルタントとして駆け出しの頃、ある経営者の方から、「中村先生、概念論は良い、具体論が欲しい」というご指摘を受けることがありました。「中村先生の言っていることはわかるけど、じゃあ、具体的に何をしたらええねん?」ということなんですね。その理由は何だったか?と私なりの説明をすると、やはり「言葉を具体的にできていない」ということになる、「言葉を具体的にできていないということは、自分自身が理解できていない」ということになってこようかと思います。

聞いていて分かり易いお話をされる人、聞いていても何か分かりずらい話だなぁと感じる人、この違いは、分かり易い話をされる方というのは、話し手が、自分自身で理解している言葉を使って話をしているから分かり易い。逆に、分かりずらい話というのは、話し手自身が、自分で理解していない言葉を使っているから、分かりずらいということになるんだと思います。

ですので、言葉というものの意味を自分自身が分かって使っているか?が第一に大事なこと。そして、自分が使っている言葉の意味を、相手に理解していただくための話し方をするのが次に大事なことだと思います。相手に自分の使っている言葉の意味を説明できないということは、自分自身が使っている言葉の意味を分かっていないか、または、相手に理解をしてもらおうと思っていないか、もしくは、相手に理解を委ねている、ということになります。結局、自分が理解していなかったら、相手への説明ってつかないんですね。それは話が上手か下手かじゃなく、口下手か口下手じゃないかではなく・・・。そして、そんな思考の状況で、ほんとうに具体的な行動な行動に繋がるでしょうか?というと、それは具体的な行動には繋がらないと考えれますね、ということであります。

 

☑ 優秀な子供さんと接して感じたこと

先日、大変優秀なお子さんと接する機会がありました。歴史のある全国的にも名の通った進学校に通っておられる高校生です。そういう歴史のある進学校に行っている子供さんたちを見て感じるのは、おそらく、彼らは、自己管理能力に優れているんだと思いますね。いわゆる、自分を律する能力、自分をコントロールする能力に長けている。まだ高校生くらいだったら、「まあ、これぐらい良いか・・・」と、楽な方に流れるところなんですが、「漫画読みたい、ゲームしたい、テレビ見たい」といったときに、「勉強せなあかんなぁ」と机に向かうことができる。おそらく普段から、「眠たいなぁ」と思っても、「勉強しとかないとあかんなぁ」「宿題しとかないといけないなぁ」「塾に行っておかないとあかんなぁ」とやっているから、自分をコントロールすることができるんだと思います。それは「親に怒られるから、やっておこう」というような理由ではなくて、自分でやらないといけないと納得してやっているからなんだろうと思います。

私は途中で挫折していますけれども、私の場合は体を動かす方でしたけれども、やはり甲子園で活躍できたり、甲子園で活躍するだけでなくて、プロ野球に行っても活躍できる人というのは、結局、小学校中学校の頃から、野球漬けなわけですね、皆が遊びに行っているときに、皆と同じように遊びに行きたいとか、シンドイからもうこれ以上走りたくない、つらい練習したくない、といったときに、子供のころから、自分をきちんと律して、トレーニングをしたりすることができる人が、プロ野球に行っても伸びている。本当の素質だけであれば凄い人は沢山、居てるんですが、プロ野球に行っても活躍できる人、プロ野球に行って潰れてしまう人も居るわけなんです。プロ野球に行ける人たちっていうのは、ドラフト1位も6位も紙一重だと言われていて、結局6位の人でもプロ野球で上に登っていける人というのは自分を律することができる人、律する力がある人だと言われています。

 

また、論理的な思考能力というのは、大体15歳くらいまでに決まると言われています。で、それは家庭環境なんです。親が、ある程度、子供に対して論理的に接している家庭の子でないと、子供は論理的にはならないです。論理的な能力が低くてもある程度の学力は付けることができまず、それは「暗記力」で・・・。でも、社会に出て学んだことを使おうと思うと、論理的な思考能力が必要になってきます。論理的な思考が高められた子供達というのは、いわゆる進学校に進んでいくので、周りにも論理的な思考ができる人たちが少なからずいるので、どんどん強化される。一方で、論理的な教育環境がないところで育った子供たちというのは、論理的な思考をする人がいるところに行くと、「なんか、こいつら理屈っぽいなぁ」「なんか細かいなぁ」ということになって、自分からどんどん離れていく。違うコミュニティの方が居心地が良いのでそこに留まる。そのようにして、どんどん二極分化していくところがあると思いますね。

 

 

 

☑ 「暗記すること」と「記憶すること」とは違う

「暗記すること」と「記憶すること」とを、私は違う意味で捉えています。私が考える「暗記」というのは、何か答えのあることを丸々憶えること、憶えようとすること。「記憶」というのは自分に必要なことを憶えること、憶えようすることになります。すなわち、自分に必要なことを選ぶ能力があるから、「記憶」というものができる。暗記する人というのは、何が重要なのか分からないから、丸々、頭の中にいれようとする。

それは、たとえば、他人の話を聞くときのメモの取り方なんかに現れたりします。記憶力が優れた人というのは、キーワードだけをポンポンポンと書いておけば、そのキーワードをスイッチにして、「あの時、こんな話を聞いたなぁ・・・」と、思い出すことができる。でも、相手の話の意味を分からずに、分かろうとせずに、それを丸々憶えようとするのが暗記です、だから忘れてしまう。そうではなくて、大事なことをきちんと自分の頭の中に定着させようとするのが記憶で、記憶力が優れている人は、相手の話を聞きながら、それに取り組んでいる。

だからこそ、相手から聞いたことを、自分の言葉で置き換えて話をすることができるし、他人にも説明することができる。だってそうでしょう、他人に説明するというのは、自分自身が理解をしていることが前提になりますから・・・。そして、自分の普段の生活の事象に当てはめたり、繋げたりして、事例化できる能力にも長けています。それは裏返すと、普段のなにげないことも含めて、自分の周りで起こる事象について、きちんと観察して自分なりの理解をしていることも表しています。いわゆる「地頭の良い人」というのは、「暗記」ではなくて、「記憶」力に優れているんだと私は思います。

 

 

☑ 頭の良さをどう使うか?

世の中で「この人は優秀だ」と見られている方にも、学校の答えのある勉強を頭の中に入れてテストに強い人と、ほんとうに地頭の良い人というのがいらっしゃると思います。私も社会に出て、いろいろな方とお会いしてきました。東大卒、京大卒・・・、たとえば製薬会社さんなんかにお邪魔していると、医学部卒とか、薬学の博士号を持ってらっしゃる方とか、たくさんいらっしゃいます。そういう方々でも、「ああ、この人、頭が良いなぁ」という人もいれば、「この人は、試験を通ってきた人だなぁ」という人もいらっしゃいます。

余計なお世話かもしれませんが、地頭の良い人に対して、私が心配するのは、自分よりも出来ない人達と接したときに踏ん反り返らないよう気を付けることです。刃物というのは世の中のために使う、世の中の役に立つように使うこともできれば、犯罪にも使える、他人を傷つける凶器にもなるわけですよね。頭の良い人というのは、他人を見下すようになってしまうと良くない。人間、見下す方が楽ですからね、でも、その頭の良さを悪い方に使ってしまうと、世の中で、「あの人、あんな良い学校を出て、あんな凄い会社に勤めておられたのに、何でこんな人生、棒に振るんやろうな・・・」と言われているような人というのは、そういうふうになったのではないだろうか、と思いますね。人間というのは、若い頃には、「世の中にはスゴイ人がたくさん居てるなぁ・・・」と思っていても、学校から社会に出て、ある程度、年齢が上がっていって自分より下も見えるようになってきたときに、どうするのかで分かれてしまう。自分よりも下の人たちを見て生きていくのか、自分よりも上の人たちを見て生きていくのかによって、そういう優秀な人であっても、その人生を左右することになっていくのだろうなぁ、と思いますね。

 

 

< 次回 第三十三回 究光塾へ続く・・・ >

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