究光塾リポート

第三十一回 究光塾リポート

2019年04月01日

< 講師 中村より お伝えしたこと 抜粋 >

  

 

☑ 貢献に焦点を当てる       

*「この顧客が成果をあげるために、自分がどのような貢献ができるのか?」

*「この顧客のために行動しているか?」

*「(それは)この顧客(人・組織)にとって一番良いことなのか?」

今回のワークを通して、継続して、ご自身の「問題」というものを考えていただいておりますが、その際には、上記のような観点、すなわち、貢献に焦点を当てて考えることが大事になってきます。自分自身で「これは大事だ!」と思っていることが、果たして、顧客に対する貢献に本当に繋がっているのか?ということが大事で、そこでは、「自分を中心に考えていては ダメですよ」ということ、「自分がやりたいこと・やりたくないことで考えるのではなくて...」ということであります。

ここでいう「顧客」というのは、お客様だけではなくて、自身が所属する組織も顧客だと考えてください。これは経営者であれ、組織に勤めている人であれ、同じです。もちろん、売上・ご費用をいただいているお客様が最優先でありますが・・・。たとえば、経営者の立場にいらっしゃる方であればで、自分の組織と言うと、「働いてくださっている社員の方々に貢献できているかどうか?」という観点になります。

たとえば大きな組織ですと、経理部門で経理処理をしている人、総務部門で給与計算を担当している人なんかであれば、直接、お客様は見えないわけなんです、そうすると、「経理処理や給与計算のお客様は誰か?」を考えた場合に、それは、自社の社員になるわけなんですね。というように、「自分が行動することによって貢献できる人、貢献する人は誰なのか?」を考えていただくことが大切です。それが、結果的に、売上・ご費用をいただいているお客様への貢献に繋がるわけなんですね。

たとえば私であっても、私がお邪魔しているお客様の企業で、その企業の方々がスムーズに仕事ができたり、コンサルティング業務でその企業の仕組みが良くなったりすると、結果的に、その先にいらっしゃるお客様(顧客の顧客)が喜んでいただけるということになっていくわけなんですね。結局のところ、市場に関係なく仕事をしている人というのはいない、存在しないんです。元々のお金の源泉となっている方々に関係のない仕事をしている人はいない、存在しないわけなんです。

 

たとえば、協力業者さん・下請業者さんについて考えても、そうなんです。直接的に貢献すべき相手は、当然、お仕事・売上・ご費用をいただくお客様なんですかれども、そのお客様に貢献しようと思ったら、協力業者さん・下請け業者さんに対して、「仕事を振ってやっているんだから・・・」ということで、上から目線で強くあたっても、この人手不足の時代、余計に自社から離れていくわけなんです。信頼関係を作って、値引き要請もしないし、支払もスムーズにして、ということが、結果的に、協力業者さん・下請業者さんに貢献することになり、そして、協力業者さん・下請業者さんがその対価として、自社に貢献してくださることが、結果として、自社のお客様に貢献することになる。自社ですべてやろうと思ってもできないわけですから、協力業者さん・下請業者さんにお願いをするしかないわけなんです。そうすると、協力業者さん・下請業者さんに貢献をしていかないと、協力業者さん・下請業者さんは良い仕事を提供してくれない、こういうふうな流れになっている。ですから、「お金を払う方が強い」というのは、これは今の時代だからというわけではなく、昔から、それは違うわけなんです。上から目線で振る舞っていると、好環境になれば、いち早く自社から離れていかれてしまうわけですよね。

 

 

☑「功利主義」と「義務主義」

哲学の考え方で、功利主義という考え方があります。これを私の理解で説明しますと・・・たとえば、お商売をやっていくうえで「自社の売上を上げるためには道徳が必要だ」とする。道徳を重んじる、たとえば「他人に誠実になる」「嘘をつかない」「お客様のために一生懸命頑張る」ということは「自社の売上を上げるためだ」とする。そうすると、自社の売上が上がるのであれば、別に「他人に誠実でなくても」「嘘をついてでも」「お客様のためでなくても」、売上を上げることってできるよね・・・と。つまり、功利主義というのは、道徳を手段としてつかっている。「他人に誠実になる」「嘘をつかない」「お客様のために一生懸命頑張る」といった大切なことを手段として使っている、こういうことなんです。

一方で、義務主義(義務論)というものがあります。ここでいう「義務」というのは、「絶対的に、当たり前のこと」という意味合いで捉えてください。そうすると、義務主義(義務論)というのは、どういうことかと言うと、「他人に誠実になる」「嘘をつかない」「お客様のために一生懸命頑張る」というのは、至極当たり前のこと、当たり前の話でしょ、ということです。

たとえば、「ここで、こういう対応をしておけば、お客様に信用してもらえそうだから、誠実な対応をしておこうか・・・」とか、「ここで嘘をつくと、信用なくすかもしれないから、嘘をつくのは止めておこうか・・・」というのは、功利主義なんです。「そんなこと、何があったって、嘘をつくのはもっての外だ。」「お客様を騙すなんてことは絶対にダメなことだ。」というのが義務主義(義務論)の考え方です。「嘘をつかない」という行為が正しいのは、「嘘をつかない」行為そのものが義務だからであり、それが自分・自社にとってよい結果をもたらすからではない、ということです。

そして、「問題」を考えるうえでの以下の観点も、「当たり前」のこととして考えていただきたいんです。

* 「この顧客が成果をあげるために、自分がどのような貢献ができるのか?」

* 「この顧客のために行動しているか?」

*「(それは)この顧客(人・組織)にとって一番良いことなのか?」

すなわち、「この顧客が成果をあげるというのは、私が仕事をしていくうえでは当たり前のことじゃないか・・・」と考えましょうね...ということであります。ご自身の「問題」というものを考えるにあたって、「これは自分にとって重要なのかな?」ということは、どちらかと言うと、功利主義になってしまうので、目的達成のための手段をコロコロ変えることになってしまいかねません。つまり、それは「他人のせいにする」ということです。

で、綺麗なことだけをやってと、人間はそんなパーフェクトにはできないものです。悪魔のささやき、というものも絶対あるわけです。人間というのはそういう部分も持ち合わせているからこそ、功利主義ではなくて、「"お客様のためになる"というのは当たり前のことだねよ...」ということを常に持っておく、「"お客様のためになる"というのは当たり前のことだねよ...」ということを当たり前にしていかないとダメですよね、ということなんです。

経営理念で「お客様のために・・・」と謳っていて、常々、私が理念は「組織の究極の目的ですよ」と申し上げていますが、それはどちらかというと義務主義的な考え方です。でも、そうは言っていても、「自社にお金を払ってくださる方がお客様だ」と考えて、お金を払ってくださらない方、自社の商品やサービスを買ってくださらない方はお客様ではない、と考えてしまうのは、功利主義だと言えます。「自分たちのサービス、商品を買ってくださらない方はダメだ、お金を払ってくださる方には親切にしよう・・・」となると、「親切にすること」が手段になってしまっていますよね。

 

 

「目的・目標(手段)」と「結果・原因」の「何故なぜ?」

「何故?なぜ?」を考える場合、この「なぜ?」には、原因を追求する「なぜ?」と、目的を考える「なぜ?」とがありました。ですから、問題を考える際にも、原因を追求していくだけではなくて、目的も考えていく、2つの側面から問題を考えていくことが大事になります。

たとえば、「顧客増が図れていない」という問題を考える場合には、原因(なぜ顧客を増やせていないのか?)を考えるといったマイナス面(原因は、往々にして、「〇〇ができていない」「△△が足りていない」・・・というようなマイナス表現になりがちです)のことだけではなくて、目的(顧客を増やしたいのは何のため?)という「理想」も追いかけていくことになります。

前回もお伝えしましたが、『原因と結果の法則』というものがあります。この経過(プロセス)を経るから、この結果に繋がる、ということです。たとえば、「5キロ太った」という結果に対しては、「食べ過ぎた」ということが一つの原因として考えられますね。これを、原因「Why So?(それは何故?)」、結果「So What?(だから何?)」で考えてみると、

Why So? ・・・ 「5キロ太ったのは何故ですか?」 ⇒ 「食べ過ぎたからです」

So What? ・・・ 「食べ過ぎた」 ⇒ 「だから5キロ太った」  

このようにどちらも意味が通じますので、これは因果が成り立っている、因果関係がある、と確認ができます。

 

これを、「目的」と「目標」の関係についても当てはめて考えることができるんです。

目的というのは「目標の存在理由」であり、目標と言うのは「目的を達成するための手段」である、これは私が常々申し上げているとおりです。

そこで、たとえば、目的が「海外旅行に行くこと」であり、目標(目的達成のための手段)が「100万円を貯めること」とすると、この関係が正しいかどうか?は、こうやって確認することができます。

「目的」を「結果」と捉え、「目標」を「原因」と捉えてみてください。そうすると、同じ関係が成り立つことを確認することができます。

Why So?・・・「海外旅行に行くことができたのは何故ですか?」 ⇒ 「100万円貯めることができたからです」

So What?・・・「100万円貯めることができた」 ⇒ 「だから海外旅行に行くことができた」  

 

 

☑ 論理的とは  

 

「論理的に思考する」ことができていないと、本当の問題解決はできない、本当の解決策を考えることはできないのだろうと思っています。また、いろいろと取り組みを進めても、具体的な成果に繋がっていかないのは、さまざまな原因があるんですが、こういうところの考え方で、「今、これをやっておかないといけないな・・・」「今、ここに手を打っておかないといけないな・・・」ということが、ズレている可能性があると思っています。「経営を勉強する際に、論理的に思考することが大事ですよ」ということが盛んに言われているのは、こういうところなんだろうと思います。

「なんか感覚的にやっているよね、あの人。こうなこと考えていないよね・・・」と思われているような経営者の方でも、話をしてみると、実は、論理的に考えておられることがわかったりします。逆に、非常に論理的に考えているように見えても結果が出ていない方というのは、突き詰めていくと、実は論理が破たんしていた、とか、前提条件が違っていた、といったことがあったりします。

たとえば、三角形の一角の角度を求めようと思ったとき、二つの角の和(合計)が135度であったとするなら、求めたい答え(一角の角度)は45度だとなりますね。これは、三角形の内角の和が180度だという前提があっているから出てくるわけです。でも、三角形の内角の和は200度ですよ、という前提で考えていれば、間違った答えを求めてしまうわけなんです。そもそも前提を間違って捉えていれば、問題の設定自体おかしくなるし、問題の設定がおかしければ、いくら考えても間違った答えにしか辿り着きませんよね、ということなんですね。

ここをしっかり押さえておかないと、短期的には売上あがったとか、成果が出たとしても、それは何らかの偶発的な要因であって、それを継続的に続けることは難しいのではないのだろうか、というのが、これはあくまでも私の経験則になるんですが、思うところであります。

< 第三十二回 究光塾へ続く・・・ >

 

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