究光塾リポート

第二十五回 究光塾 集中勉強会リポート

2018年10月16日

< 第二十五回 究光塾 集中勉強会 講義概要 >

 

1.      「ものごとの捉え方」の重要性について

2.      思考停止に陥らないために気を付けること

3.      実践するべき思考法

4.      次回までの課題 ご説明 

 

 

 

【講師 中村より お伝えしたこと 抜粋】

 

☑ ものごとの本質を考える ~問題の捉え方~

 

この究光塾にお集まりの皆さんは、それぞれリーダーという立場で、リーダーシップというものを発揮いただく方であります。リーダーシップというのは、これまでも何度もお伝えしてきたように、「対人間の影響力」なんですよ、ということです。「影響力」ということですから、プラスの影響もあれば、マイナス影響もあります。皆さん方には、「もちろん、プラスの影響を与えるようにしてくださいね」というお話もしてまいりました。

また、「影響力」ということで考えると、「上から下への影響力」だけではなくて、「下から上に対する影響力」というものもありますし、「横に対する影響力」というのも、もちろんのことながらあると思います。ですから、リーダーシップというと〝人の上に立って"というようなイメージや、〝先頭に立って"というイメージがありますが、影響の与え方というのは、いろいろ影響の与え方があるわけなので、いろいろなリーダーシップの発揮の仕方があるということであります。

いろいろなタイプの影響を与える方がいらっしゃるから組織というのは成り立つわけなんです。例えば、京都には立派な経営者がたくさんいらっしゃいます。京セラの稲盛さんであったり、日本電産の永守さんであったり・・・。それぞれすごい経営者で、そのリーダーシップというのも当然すごいリーダーシップなんですが、じゃあ稲盛和夫さんが社長で、部長も、課長も、主任も、新入社員も、みんな稲盛和夫さんのような人物だったら組織が成り立つかというと、そういうわけではなくて、いろいろなタイプの影響を与える方がいらっしゃるから組織というのは成り立つわけであります。ですから、そういうすごい経営者のリーダーシップだけがリーダーシップかと言うと、そういうわけではないということですね、そこの部分はご注意くださいね、ということであります。

 

そして、これもこれまでお伝えしてきたことの復習になりますが、リーダーシップを考えた時に、「リーダーの成長プロセス」というものがありますよ、というお話をしてまいりました。「リード・ザ・セルフ」「リード・ザ・ピープル」「リード・ザ・ソサイエティ」というものがあって、〝セルフ"というのは「自分自身」、〝ピープル"というのは「人々」、そして〝ソサイエティ"というのは「社会」ですよ、というお話をしたかと思います。成長のプロセスということですから、自分自身にまず影響を与えられるようになると周りの直接的な人々に影響を与えられるようになり、直接的に接点がある方に影響を与えられるようになると〝ソサイエティ"というのは「社会」とか、もう少し広くなると「間接的」とか、そういった観点になってこようかと思いますけれども、広い意味での影響を与えることができるようになる。例えば、ある本を読んで感銘を受ける、でも、その著者に直接会ったことがあるか、というと会ったことがない。でも影響を受けているとか。また例えば、歴史上の人物で尊敬するリーダーとなったときに、徳川家康とか、織田信長とか、そういった時でも、歴史上の人物ですから、もちろん直接会ったことがない。でも、そういうふうに直接会ったことがない人に対しても影響を与えることができるというのが、「リード・ザ・ソサイエティ」の意味合いとして捉えていただくと良いと思います。だから〝時代を超えて..."とか、直接、物理的に会ったこともないのに影響を与えられる人物というのは、「リード・ザ・ソサエティ」なんだろうと・・・。そして、なにも〝カリスマ性"を持ったリーダーだけがリーダーだと言っているわけではなくて、 あくまでも、「リード・ザ・セルフ」ということを考えた時に、自分で自分をきちんとコントロールするということが何よりもまず大事になってくる。これはリーダーに限ったことではなくて、社会で生きていく第一歩ですよね、ということであります。

 

そうした前提があったうえで、〝ものごと"というものに絶対的な答えというのはないんですが、この「ものごとの捉え方」というところに焦点を当てたお話を今日はしていきたいと考えております。ですので、先ほどの「リード・ザ・セルフ」「リード・ザ・ピープル」「リード・ザ・ソサイエティ」というところでいくと、今日は「リード・ザ・セルフ」の部分にいく、まだ手前の部分で、ものごとをしっかり考えましょうね、というところのお話をする。こういうイメージを持っていただければ良いかと思います。

どうしても人間というのは何か答えがあると、それが楽に感じますから、何か答えを求めようとするんですが、前回、数学というものについての本を読んでいただいたり、 今回AI に関する本を読んでいただいたり、しているんですが、「ものごとに絶対的な答えというものはありそうでない」というのが実態だと、皆さん方は、この二年間、究光塾に来ていただいてご理解をいただけたと思います。

例えば歴史においても、我々が小学校・中学校の時に習っていた歴史の内容が、結果的に今は違っているということがあります。あれは、なぜかと言うと、歴史というのは文献主義ですから、文字として残っているものが正しい、としているわけなんです。でも、その当時、文字として残した人が果たして正しいことを書いていたかどうかなんて、わからないわけですから、新しい文献が出てくると、今まで歴史の教科書に書いていたことは間違っていた、ということが起こるわけです。例えば、〝足利尊氏が馬に乗った絵"なんていうのは、皆さん方の年代であれば、皆さん、同じ絵を見ていると思うのですが、今の教科書においては、足利尊氏ではないのではないのか、と言われていたり、たしか、源頼朝も違うという説があるかと思います。というような感じで、我々がそうだと思っていたことさえも違うということがある。そうすると、なおさら、今、「これが正しい」と思うことがあるかと言うと、そんなことは誰にも分かりませんよ、と。こういうふうなことです。ですから、「自分の頭でしっかりと考えましょうね・・・」ということが、 「AI、AI...」ということが言われるようになってからは、特に、言われるようになってきたかなと思います。現時点で「間違いなく、これが答えだ」と言い切れるようなことについては、いずれ AI が取って代わりますよ、ということが言われています。そういうことが、今、皆さん方に課題図書として読んでいただいている本であったり、その前の課題図書の『数学受験術指南』であったり、皆さんご覧になったかはわかりませんが、ドリームという映画などでも描かれている面があったかと思います。

つまり、どういうことかと言いますとね、「答えのないことを考える」ということに取り組む力というものが非常に重要になってきているんだと思います。今、大手企業であったり、私などでは学生時代、逆立ちしても入社できなかったであろう世界的なコンサルティング会社などでは、「答えのないことを考えさせる」ことを入社試験で学生たちにやらせて、「考えるプロセス」を採用時において評価していっていると言われています。正解のないことを敢えて学生たちに問うて、例えば、「そんなことわかりません」とか、答えたとしても、ヨソから借りてきたような答えをするようなことではダメですよと。答えは全然違っていても良いんだけれども、その答えを導き出した「考えるプロセス」がどうなのか、を評価する。最近、有名な言葉になってきましたが、「フェルミ推定」という、フェルミという学者がおっしゃったことなんですが、例えば、「アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」とか、「地球を動かそうと思ったら、一体どれくらい長い棒が必要なのか?」とか、そういった問題を出して採用基準としていっている会社もあると言われてます。

 

そこで、「我々は何をしていくことが大事なのか?」と考えた時、「問題とは?」ということを、これまでも何度もお話ししてきておりますが、「あるべき姿・理想と現状のギャップ、これが〝問題"なんですよ」というお話をいたしました。ですから、問題というのは、理想と現状との間に何かモヤモヤとしているものがあるとき、これが全て「問題」なわけです。そこにギャップを感じない時というのは問題とは感じない。ですから、問題というのは決して悪いものばかりではなくて、何かギャップを感じているもの。自分が理想としているものと現状とが違っているギャップだ、ということです。ですから、問題というのは、人によって見え方が全然違ってくるわけです。 同じ現象を見ていても、問題だと感じる方とそうでない方がいらっしゃるというのは、当然それぞれの現状の見え方も違うし、また設定しているあるべき姿も違う可能性もあるわけなんです。ですから、問題の捉え方・感じ方というのが人それぞれ違いますよ、というお話をこれまでしてきたと思います。これは、どちらが間違っているかとか正しいとか、ということではないんです。それは、その人それぞれの捉え方の違いだということです。ですが、たとえ、そうであったとしても、ものごとの捉え方が非常に偏っていたり、捉え方にズレがあったり、捉え方が甘かったり、といったことがあると、それはそれで、いろいろと大きなトラブルに繋がってくるわけなんです。ですから、ものごとの捉え方ということが非常に大事になるんですね。

そして理想やあるべき姿を設定しようと思うと、まずは現状をしっかり把握しないといけない。結局のところ、問題の捉え方がズレているとか、問題の捉え方が間違っているという人は、現状の捉え方がズレているので、問題を解決することもできないわけです。すべては現状をどう捉えるか?というところから、ものごとの判断というのは始まるんですよ、ということであります。そして、今日の集中勉強会を通して私が申し上げたいのは、ここの部分であります。「どういうふうにものごとを捉えるか?」「起こっている現象をどう捉えるか?」 これが本日の集中勉強会のテーマになります。だって、そうでしょう。現状をしっかり把握できるからこそ、あるべき姿というものも設定できるわけですね。そして、あるべき姿がしっかり設定できるから、そこでギャップが生まれて、そのギャップを埋めるための解決策を考えるわけです。ですから現状をしっかりと把握するということが非常に重要になってくる、こういう風なことであります。

 

 

☑ 問題解決とは・・・

問題解決には、二つの類型というものがあって、ハードアプローチの問題解決の思考法と、ソフトアプローチの問題解決の思考法というものがあります。

ハードアプローチの問題解決の思考法とは、問題とは理想と現実とのギャップであり、問題解決とはそのギャップを解決すること。この「あるべき姿」や「理想の姿」を所与のものとして捉えましょう。そして、あるべき姿に向けた手段をいかに効率的に創出するかに重きを置くものです。一方、ソフトアプローチというのは、問題とは客観的に存在しているものではなくて、それを問題として捉えている人の認識・意味づけによって発生するものだとします。各々の問題意識を踏まえ、あるべき姿や理想の姿から問いただしましょう。何が問題となっているのかなど、問題の設定に重きを置くというものであります。

これは、どういうことかと言いますと、パソコンの本体を〝ハード"と言いますね、そして〝アプリケーションソフト"と言いますね、ハードアプローチというのは「枠組み」という意味合いで捉えてください、あるべき姿を所与のものとして捉える。例えば、ダイエットを例にとりますと、病院の先生から、「あなたは今70 キロ だから65キロまで体重を減らしてください・・・」と言われる場合です。そうすると、5キロという問題が与えられている、既に枠組みができている訳なんです。そして、この5キロというものを、どういうふうにして失くすか?ということだけを考える、これがハードアプローチです。自分の頭で考えているのは、5キロのギャップだけをどうするか?これだけを考えています。

一方、ソフトアプローチというのは、自分で70 キロ だという現状を把握する、そこから自分で68キロにするのか?65キロにするのか?はたまた70キロのままで良いのか?ということを自分自身で設定をしていく。これがソフトアプローチの思考法です。ただし、「70キロのままで良い」というのも、ただダイエットをしたくないから70キロのままというのではなくて、今ある脂肪を全て筋肉に変える、体脂肪率は落とすけれども体重は維持する。例えば、こういう問題解決の方法もありうるわけなんです。そうすると、ギャップというのは70キロから70キロですから、存在しないわけなんですが、その場合には、体脂肪率を25%から15%にするというふうに設定を変えれば良いわけなんです。

 

このようにハードアプローチとソフトアプローチ、二つのアプローチがあるわけなんですが、ハードアプローチでものごとを考えていると・・・とか、ハードアプローチで仕事をしている人たち、つまり、枠組みが決まっているところで仕事をしている人たちの仕事は、AI によって無くなっていきますよ、ということが言われていて、逆に、ソフトアプローチ、すなわち、自分で現状を正しく把握し、周りが求めている〝あるべき姿"を自分で設定して解決していく、こういう仕事はAIに代替されることなく残っていくでしょう、と現時点では言われている、このように思っていただいたら良いと思います。ですから、○○業というような業種自体が無くなる(AI等によって代替される)ということではなくて、それぞれの業種のなかで、どういう仕事をしているか、何をしているかということが大事になってくる、こういうふうなことなんだろうと私は思います。そうすると、何よりまずは、「現状を把握する能力が必要ですよ」「今、自分が置かれている環境というものがどのような環境なんだろう?」ということをしっかりと考えましょう」ということであります。大事なのは、現状をどう解釈しているかということだと思います。

 

また、これも以前お話ししているかと思いますが、『問題解決に失敗するのは、正しい問題に対する間違った解を求めるというよりは、間違った問題を解くことによることの方が多い』ですよ、ということ。問題のギャップを埋めることに失敗したりとか、問題解決がなかなかうまくいかないなぁ、という場合は、間違った解を求めているというよりも、そもそも、この問題自体が間違っている、ということですね。「あるべき姿」というものを設定するにも、「現状」が基となりますから、そもそも現状の捉え方がダメだったんだなぁ、というところに行き着くわけであります。

こういう言葉もあります。『間違った問題に対する正しい答えほど始末に負えないものはない』 ドラッカーの言葉でありますが、現状の捉え方を間違っているから、間違った問題が出てくる、設定されるわけです。そして、間違った問題に対する解決策を打とうとするから、状況はどんどん悪化していく。こういうふうなことであります。

そして、アインシュタインはこういうふうなことを言っています。『問題を正しく定義するということは問題を解くことと同じぐらい重要である』 つまり、どうやって問題を解くかではなくて、何が問題かを、きちんと定義することが非常に大事なんですよ、ということであります。

 

☑ 思考停止に陥らないために気を付けること

たとえば、我々はよく、「一般的」「一般的に...」と口にするんですけれども、絶対的に「一般的な」ことなんて、残念ながら無いですよね、ということであります。でも我々は、「常識でしょ...」「通念だから...」ということで思考を止めてしまいます。でも、その常識や通念といったものも、実は自分の思い込みで、決して、常識でもなく通念でもないということがあり得ますので、それで思考を止めてしまわないように注意をしましょう、と言うことであります。ですので、ここでは、「何が常識か?」と考えるよりも、「自分自身が〝考えている"と思っている(思い込んでいる)ことが、実は、思考停止に陥っていないか?」とか、常識とか通念だと思っている(思い込んでいる)ことが本当に常識であり通念であるのかを、きちんと考えるということが大事なんだということであります。

これは私自身の事例です。私は血の気が多く見られがちなんですが、実は貧血気味で、サプリメントで鉄剤をよく飲んでいるくらいなんです。で、話は少し飛んで、仕事で出張に出た際には、現地のお店に入って一人で食事をとるようなことはせずに、常宿としているホテルの近くのスーパーなどでお惣菜などを買って、仕事をしながらホテルの部屋で食事をとることが専らなんです。で、スーパーで買うお惣菜として、よく〝ひじき"を買って食べていました。それは鉄分を取るは、ひじきが良いと、ずっと言われていたもので・・・。でもですね、3年ほど前に、ひじきの成分表示が見直されたんですね。そうしたところ、ひじきには鉄分が含まれていないことが分かったんです・・・。でも、少なくとも我々世代に近しい人にとっては、「ひじきは鉄分が豊富に含まれている食べ物だ」ということに、あまり違和感は持たれないのではないかと思うんですね。では、なぜ、昔、ひじきには鉄分が豊富だと言われて思われていたのでしょう?・・・・・・

これは、昔は、もっぱら鉄鍋でひじきを調理をしていたので、調理した後のひじきの成分を調べると、鉄鍋の鉄分が溶け出して、ひじきの成分表示として鉄分が含まれているとされていたわけだったんです。でも今は、鉄ではない素材の調理器具であったり、調理器具も進化して鉄分が溶け出すことなく調理をするようになったので、ひじき自体には、鉄分が全然含まれていないということが分かったわけなんです。これは常識・通念の最たるものだと思った次第です。ですから、我々が、常識・通念だと思っていることでも、実は、全然違うということが沢山ありますよ、ということなんです。

 

また、「マジックワード」と言われるものがあります。これは、この究光塾のなかでも、皆さん方の読後リポートや提出物を拝見して、皆さん方に繰り返しご指摘していることでもあります。人間というのは〝言葉"で考えているわけですから、抽象的な言葉、感覚的な言葉を使っているというのは、考えていることになりません。何より、抽象的な言葉、感覚的な言葉を使って考えている事柄は、行動に移らないですよ、ということなんです。 例えば、「頑張る」「頑張ります」と言っていても、具体的にどう頑張るか、を考えない限りは、 頑張りようがないわけなんです。

また我々がよく陥るのは、自分が使っている定義と、相手が理解している定義とが、全然違っているんだけれども、 それで双方ともに、「相手に自分の意図が伝わっている」と思うわけなんです。そういう場合、我々は往々にして、「私は、そう思っていた...」(正しくは「思い込んでいた」ですが...)と言うんです。ですから、言葉というのは「正確に」「相手が理解できる言葉を」使わないといけないわけなんです。最近では、LINEのスタンプなどで自分の感情を表すと、決して悪いことではないんですけれども、それできちんと相互共有ができているかどうか、というと全然できていないことが往々にしてあるんですね。そういうところが非常に心配になるので、この「マジックワード」「抽象的な言葉」「感覚的な言葉」を使わないようにしていただくことが大事になります。

今の時代、いわゆる〝ゲーム"と言われるものも、能力がないと上手にできなかったり、昨今ではeスポーツと呼ばれて、ゲームも一種のスポーツとして扱うというような話も出てきています。それも大事なのかもしれませんけれども、やはり、母国語の文字をしっかり読んで、自分の頭の中でその文字を映像化するプロセスであったり、これはどういうことなのだろう?と頭の中できちんと解釈するという思考プロセスが、「頭を使う」ということなんだろうと思います。一方、携帯ゲームのように絵を見たり映像を見たりして手を動かすというのは、頭を使っているように見えて、実は反射的な行動をしているに過ぎないと言われています。それもある程度パターン化されていますから、ほとんど頭を使っていないと言われています。今は、いい年をしたサラリーマンですら、電車の中で携帯ゲームをやっているわけです。AI に仕事を取られますよ、というのは実際そういうところなのかなぁと思ったりしますね。

 

つぎに「自己検閲」というものがあります。「間違ってはいけない」とか、「間違ったことを言ってはいけない」というような意識が強いと、どうしてもこの自己検閲というものをかけてしまう傾向が強くなります。「正解を言わないといけない」という思考になって思考が止まってしまう。とにかく思考というのは量を出していただくことが大事です。たとえば、凄腕のコピーライターの方というのは、ものすごく沢山のアイデアを出されるそうです。そこから良いものを絞り込んでいく。逆にダメな人というのは、アイデアが少しだけしか出てこない。「これが渾身の一球だ」というように楽をしようとする、こういう風な差があるそうです。思考のすごい方は、沢山ある塊から余計なものを削ぎ落としていって形を創り出そうとする。 逆に、ダメな人というのは、ちょっとずつしか出さず、それを繋ぎ合わせていくというようなイメージでしょうか。いろいろなものを繋ぎ合わせて形を作っていけば、それは安く上がるのかもしれませんが、強度が弱く脆いものでしかないのでしょうね。ですから、自己検閲をかけて、少しのアイデアを出すくらいだったら、違ったものも含めて沢山のアイデアを出してみる。出してみた中から良いものを選りすぐって自分の考えとして出していく方が良いですよということ、これが思考停止に陥らないために気を付けていただくことの一つのポイントになってくるんだろうと思います。

 

また、組織などにおいては、「周囲に合わせなければいけない」という意識が思考停止を引き起こすことがあります。簡単に言ってしまえば、「空気を読め」ということです。組織内において、「カラスは白だ」と言われたら、みんな、黒に見えているんだけれども、「いやいや、カラスは黒ですよ」と言えない。裸の王様と一緒ですね。特に日本人はこの傾向が強いように思いますね。会社だけではなくて、いろいろなコミュニティや集まりにおいて見受けれれる、それが日本人の特性だと言われています。もちろん、空気を読まないといけない時もあります。難しいところではあるんです。結局、自分が「楽をしたい」とか、「考えたくない」とか、「嫌われたくない」とか、を理由にして空気を読むというのは良くなくて、必要なことはしっかり言う、おかしいと思ったことは言う、ということが正しいんでしょうね。

 

あと、「社会的手抜き」、フリーライダーと言われるもの。例えば、なにか議論をして下さい、とお願いした場合、3人一組や、2人一組の場合には、手抜きはできないんです。でも、これが5人・6人・7人となると、ただ頷いているだけなど、参加しているフリをしている、という人が増えてくるんです。これを社会的手抜き、フリーライダーと言います。実は、3人一組の時が議論が一番活性化すると言われています。そして、5人一組が限界だと言われています。

 

 

☑ 実践するべき思考法

では、「問題」というものを考えた時、「問題」を解決をしようと思ったら、我々は、どうすれば良いのでしょうか?

例えば、理想の体重が65キロで、現状の体重が70キロだとするならば、「問題(ギャップ)」は5キロだということがわかりました。では、この5キロのギャップを埋めるために、次に、何をすれば良いでしょうか?・・・・・・まずは、なぜ5キロのギャップが生じているかを特定する。5キロのギャップの原因を特定するということが必要になります。いきなり対策を打つのではなくて、なぜこの現象が起こっているのか、何が原因なのか、「なぜ?」というものをまずはしっかりと捉えること、「なぜ?」を考えることが必要になってきます。

かつ、この「なぜ?」には、もう一つ重要な観点があります。それは、「目的」の「なぜ?」を考えるということです。「なぜ」「なんで」「どうして」これを実行するのか。「なぜ」この目標を立てたのか。

「原因のなぜ?」と「目的のなぜ?」 この2つの「なぜ?」を思考するということがポイントであります。

 

ところで、この「なぜ?」というのは、時間軸で言うと、今・現在から過去に遡っています。なぜ、今、この現象が起こっているのか?ということで、過去を探っています。原因を遡るということは、過去を遡っているというふうに捉えてください。そして、時間軸で言うところの、今・現在から将来のことを考えるということも、過去に遡って考える思考と同様に非常に重要な思考となります。「影響拡大性」という考え方があります。「影響拡大性」とは、今のこの状態が続くことを放っておいて良いのかどうか?という観点です。「この状態を放っておくと、将来、大変なことになるよね・・・」ということであれば、すぐに手を打たないといけないですし、「放っておいても、どうってことないよね・・・」ということであれば、放っておけば良いわけなんです。例えば、不祥事が起こった場合などでもそうです。後から遡って考えてみれば、「これは、いけないよね・・・」ということが分かるわけです。「こんな事やっていたら、だめだよね・・・」ということが分かるわけです。でも人間というのは、その時には「まあ、大丈夫だろう・・・」と思っていて、先のことなど考えていない。ですから、不正とかデータの改ざんとか、「こんなことをやっていると、将来、大変なことになるぞ・・・」と思っていれば、そういった不正や改ざんには手をつけないはずなんですが、よくよく先のことを考えないからそのまま行ってしまう。ですから、しっかりと将来、先のことを考えるということをしていかないといけないわけです。ですので、我々は、時間軸で言うところの過去だけを見ていてもダメですし、また、将来だけを見ていても意味がないわけなんです。今・現在から過去のことも考えるべきだし、今・現在から将来のことにも思いをはせるべきなんです。

 

そして、時間軸で言うところの過去、時間軸と言うところの将来を考える場合においても、過去・将来どちらについても、我々は、誰かの立場から考えているわけです。ものごとには、プラス面・マイナス面、それぞれありますけれども、いずれも誰かにとってのプラス、誰かにとってのマイナスなわけなんですね。

実は、いろいろな立場から、ものごとを見るということが、お仕事をしていただくうえでは大事になります。同じ現象を見たとしても、どういうふうに捉えるかによって、ビジネスチャンスとして捉えることもできれば、悲観的に捉えることもできる。ビジネスだけではないんです、同じものごとを見ても、人によって見え方・捉え方が違うというのは先程も申し上げたとおりです。ものごとの本質を考えるというときも、原因を考えるにしても、影響拡大性を考えるにしても、すべて、いろいろな立場からの原因であったり影響であったりを考えるということが非常に重要になってきます。

いろいろな立場からものごとを見ることを、「視座を転換する」と言ったりもしますが、この視座の転換ができないと思考が広がっていきません。「こうも考えられるよね・・・」「または、こうも考えられるよね・・・」と、いろいろな立場・角度から見ることによって、自分の考えを批評しながら、批判しながら、「本当に自分の考えは、これで良いんだろうか?」「自分の考えはズレていないだろうか?偏っていないだろうか?」というように、客観的に見ていく、というのが視座の転換です。偏りが出ているというのは視座の転換ができていないという証拠になります。立場が変われば、見え方が変わってくる。有名なお話ですが、「6人の盲人と象」という話があります。

 

6人の盲人、目の不自由な人が、象のことで議論をしています。1人目の盲人は象の胴体の部分を触って「象は壁みたいなものだ」と言っています。2人目は象の角の部分を触って「象は槍みたいなものだ」と言っています。3人目は象の鼻の部分を触って「象は大蛇、蛇みたいなものだ」と言っています。4人目は象の足の部分を触って「象は丸太みたいなものだ」と言っています。5人目は象の耳の部分を触って「象は大きなうちわみたいなものだ」と言っています。6人目は象の尻尾の部分を触って「象は綱引きの綱みたいなものだ」と言っています。皆がそれぞれ自分の意見を主張して相手の意見を受け入れない、こういうお話です。

 

皆、それぞれ自分が見えているものが正しいと思っているわけです。しかしながら、6人それぞれの主張である「壁」「槍」「蛇」「丸太」「うちわ」「綱」を繋ぎあわせると、「象」になるかと言うとならないわけです。所詮、我々の感覚というのはその程度のものなんです。我々は、「自分はものごとの本質を捉えている」「自分の見えてるものは間違いない」と、こう思っていても、結構、捉え間違えていることが多い、こういうふうなことなんです。ですから、いろいろな角度から、また時間軸も現在から過去、現在から将来、を見ていくということが大事になってくる。現状を把握していくうえでは非常に重要な観点になってきます。

 

この究光塾のなかでは、今後、〝フレームワーク"と言われるものを勉強していていただく場面が出てこようかと思います。でも、「フレームワークを覚えたら戦略ができる」とかって感じておられる方が、実は、世の中にはたくさんいらっしゃる。最近は、さすがに、「そうじゃないですよ・・・」ということが盛んに言われるようになってきましたけれども、つい5年ぐらい前までは、「フレームワークを勉強すれば、それで戦略を分かっている」と思い込んでいる方が多かったんですね。そうではなくて、あくまでもフレームワークはフレームワークでしかありません。そういった、数学で言うところの〝公式"みたいなものは誰でも簡単にできるようになっているんですが、でも、誰でも簡単にできるようなものというのは、一体、どれだけ役に立つんでしょうか、ということを考えた時、やはり、「自分の頭でしっかりと考える」ということが、組織だけに限ったことではなくて、自分自身にとっても必要なことになってくると思います。

例えば、今、多くの企業・組織において、人材が採用できない、ということが悩みの種になっています。なかなか人が採れないといった時に、いわゆる人材募集会社の言うとおりにしていて、自分たちでは何も考えずになっていて、それで本当に人が採れていくかというと、そういうわけにはいかないわけですよね。やはり、自分たちの頭で、どうやったら人が来てくれるんだろう?ということを考えていくことが必要です。

今、大手の一部上場企業においては、人材の採用というのはマーケティングだ、ということを言い出しています。人を採用しようと思うと、人が来てくれるようなマーケティング戦略がないと、人の採用ができないんだと、一部上場企業が言い出しています。今まで、マーケティングと言うと、自社の製品やサービスを買っていただくためにやっていたわけですね。どこに自社のお客様がいらっしゃって、どうやって買いにきていただこうか、と考えていたわけですけれども、人の採用についても、どうやったらうちの会社に人が来ていただけるか、を考えていく時代になってきたということです。単に求人広告を出して、という時代ではなくなってきている。どんな業種業態であっても良い人を採ろうと思うと、どうやって自社の魅力を出していくかを考える、商品やサービスを買ってもらえないというのと一緒で、良い人材に入社してもらおうと思うと自社の魅力を出していかないといけない。ですから、「人の採用というのはマーケティングだ」というキーワードが普通になってきているようであります。なにも人の採用の話をここではしたかったわけではなく、そういうように発想自体が変わってきているんですよ、ということです。採用とは人に来ていただくという発想になってきている、「採用」というものごとの捉え方が変わってきた、こういう事例としてお話をいたしました。

 

 

▼ 次回までの課題ご説明

1.「受講報告書」について

 ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。

 この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。

 究光塾開催の翌週の月曜日(10月1日)を最終納期でお願いいたします。

2.「振り返り」をメーリングリストにて、直接、全メンバーに送信してください。

 平成30年9月30日(日曜日 23時59分59秒)を期限として送信をお願いいたします。

①   本日の内容から得たこと 

②   (今月の参加により)取り組むことと決めたこと【エクセルファイル】

 「顧客の増加を前提とした売上の増加」を実現するための

     1.組織レベルの業務に直結するもの

     2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

③   その他(感想、質問、講師について等、自由に。ただし必須)

 

3.ご自身に対する他の受講メンバーからの『相互フィードバックシート』のコメントへの

 フィードバック(返信・回答)についても、上記2同様、9月30日(日曜日 23時59分59秒)

 を期限でお願いいたします。

 

4.平成30年10月21日(日曜日 23時59分59秒)提出期限の課題について

A)    課題図書 読後リポート

B)    課題図書に関する 「自己の成長」と

 「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる課題と解決策の検討(3項目)

C)    これまでに設定した取組課題【エクセルファイル】についての進捗状況・振り返り

 取組課題【エクセルファイル】は、2種類です。

①     課題図書から抽出した「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる

 課題と解決策(3項目)

②     (今月の参加により)取り組むことと決めたこと

      「顧客の増加を前提とした売上の増加」を実現するための

      1.組織レベルの業務に直結するもの

      2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

< 第二六回 究光塾へ 続く ・・・ > 

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