究光塾リポート

第二十三回 究光塾リポート

2018年08月08日

< 第二十三回 究光塾 講義概要 >

 

1.      課題図書『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』 総評 

    ~ リベラルアーツの重要性 ~

2.      マネジメント講義

3.      論語

4.      次回までの課題 ご説明 

 

 

【講師 中村より お伝えしたこと 抜粋】

 

̻☑ リベラルアーツの重要性 

これは、私がお仕事とは離れたところで、お付き合いをさせていただいている、ある経営者のお話なんですが。

その方は、ご自身の事業は様々なご苦労を経験されながらも、堅調な成長を続けておられます。もちろん、仕事に対する厳しい一面も持ちあわせていらっしゃいます。そうした一面もありながら、この方は美術や芸術、工芸などがお好きで、まだお若いころから、画廊や美術商などに通われて、永年にわたって、真摯なお付き合いを続けてこられているんです。そうした真摯なお付き合い、利害や欲得なく、他人に対して自分ができることをさせていただこうとなさる行動が、価値観や哲学が引き合うのでしょうね、結果的に、凄い人脈に繋がっていっている。この方は、私に対してもいろいろお声掛けをくださったり、ありがたいことに懇意にさせていただいているのですが、この方を拝見していると、いわゆる、「一般教養」というものを超えた本質的なリベラルアーツというものの重要性を感じるんですね。

 

日本には、なかなかそういったことができる人は少ないと言われていますけれども、ヨーロッパでは、美術や芸術に携わる人を支援するパトロンという方々がいらっしゃって、そういうお金持ちが、そうした行いを通して社会に対して還元をしていく、見返りを期待せずにお金を出していくという文化があります。日本の場合は、そういった部分でいくと、まだまだその域には達していない。社会貢献というのも、どちらかと言うと、自分の会社に戻ってくるようなものが、まだまだあると言われていますね。

もちろん、「商売・商売・商売」「利益・利益・利益」というのは大事です。それを否定することは決してありません。この経営者の方も、どうしてそれだけ他人さまのためにできるかと言ったら、自分の事業が堅調にあって、きちんとした収入があるからこそ、そういった行いができるわけであります。事業を通して他人の役に立つことは大事です。お客様のため、市場のため...と。でもそれは見返りを期待している部分もあります。そうではなくて、そういった利害を超えたところで、「他人のため...」とやっていると、結果的にめぐりめぐって、自分のところに思わぬことが戻ってくるということがあるんですよ、ということ。そうした実例を、私は、その経営者の方とのお付き合いを通して、割合と近い距離で見聞きし、勉強させていただいているなぁ、と感じます。

私自身は全然そこまでにも至っていませんし、他人さまのために、そういうこともできていません。偉そうなことは言えなくて、見聞きしてきたことを申し上げているだけであります。「こういう風な世界もあるみたいですよ」ということを私から見ていても「すごいなぁ」と思います。そういうことを見ていると、「自分って、ちっぽけやなぁ...」と常に思うわけです。

ただ、皆さんにも申し上げているように、自慢をするつもりでもないですが、たとえば、「20代の頃に、こういう経営者の方とお付き合いすることができたかなぁ...」 「30代の頃、40代前半の頃、お付き合いできていた経営者の方と、今はお付き合いできなくなったけれども、今こういう方とお付き合いできるようになっているというのは、少しは私も成長できているのかなぁ...」と、こういう風なバロメーターにしている部分もあるわけなんです。

ですから、私が皆さん方に、ムラ社会のなかだけで過ごすのではなくて、「いろんな人と会いましょう」と申し上げているのは、そのなかで、「自分はちっぽけやなぁ」と、「自分は、なんと、ちっぽけな存在なんだろう」と思うこと、そう思うことが自分の成長の糧になっていくのだろうと、私は思っています。

 

以前にも、「劣等感」と「劣等感コンプレックス」とは違う、というお話をいたしました。「そんな世界は、僕たちには関係のない話ですよ...」とか、「僕ら、そんなレベルじゃないですから...」となってしまうと、これは「劣等感コンプレックス」です。自分を正当化して、「お金持ち同士でやってたら、いいやん...」という僻みです。それでは人間として成長できないと思います。「そういう方々とも、ある程度、共通言語とまではいかなくとも、少しは話ができるようになりたいなぁ...」と思う。これが「劣等感」です。

 

人間というのは「劣等感」で便利になっていっているんです。何故かと言うと、「こういうこと不便だなぁ」とか、「不便でもしょうがないよね...」ではなく、「こういう風なこと、今はできてないけれども、できたらいいよね、できるようになったらいいよね。」ということで、科学や技術がどんどん進化しているわけですから。「簡単ではない、大変だけれども、なんとかしたいよね...」と思うのが「劣等感」です。

 

今回、「リベラルアーツ」ということに一つの観点を持って、『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』を再読いただき、読後レポートも書いていただくことをお願いいたしました。いろいろな方とお会いしたりとか、さまざまな方と接点を持つこと、それは仕事という直接的な接点というところだけではなくて、もちろん仕事でもそうなんですけども、自分が相対しやすい人たちばかりでなく、たとえば、「この人、すごいなぁ」「この人、緊張するなぁ」という人とも接点を持つことも、大切なことだと思います。また、いろいろな観点、さまざまな視点から、自分の事業はもちろん、事業以外のことでも、世の中のものごととの繋がりであったり、逆に「どう繋がっていくだろう」ということを考えていくということが非常に重要になるということを申し上げたくて、今回、課題図書への再取組みをお願いした次第でありました。

 

 

☑ 思考停止した職場では、効率化ははかれない。

これは我々コンサルティング業界では有名なお話なんですが、トヨタ自動車のOBの方々がつくられた生産管理のコンサルティングを行うコンサルティング会社が、当時、郵便局に入って、目の当りにしたのは、どういうことかと言いますとね・・・郵便局では、局員が配達するべく、葉書や封書を、郵便番号ごとに、壁面に設置された、いわゆる「仕分け棚」に仕分けをしていくわけですね。普通に考えると、たとえば10進法とか5進法とかの「仕分け棚」を考えると思うんですが、実際は、それぞれの郵便局によって、6進法の棚のところもあれば、10進法の棚のところもあれば、15進法の棚のところもあったというんです。それは何を根拠に棚の形状を決めていたかというと、単に、壁面の空きスペースにあわせて決めていたというんです。本来、棚の規格を統一しておけば、棚の位置が頭の中にインプットされていくので、効率化や標準化をはかることもできるのに、個別個別の建物の壁面のスペースにあわせていたという・・・、「今まで、ずっと、こんなんでやってきていたのか...」と、コンサルティング会社は愕然としたというお話です。

ですから、何も考えることなく、郵便物を仕分けする作業が目的、体を動かすことが目的になっていたのでしょうね。一見すると、オートマチックでやれば効率は上がるものだと考えがちなんですが、「何も考えずに」オートマチックでやってしまうと、往々にして失敗します。それは、課題図書『失敗の本質』にも書いてあったとおりです。かえって、何も考えず、体を動かしているから、結果的に効率も落ちる。本来は、事前の設計段階から、きちんと考えることをしないといけない、思考を働かせないといけないということです。

 

 

☑ コミュニケーションとは・・・

コミュニケーションとは、「人間関係を促進することを目的に、意思や態度を共有化することを期待して、受け手と送り手がお互いに伝達あるいは交換する過程」と捉えてください。

コミュニケーションと言うと、一方的に何かを伝えるというイメージを持っておられる方もいらっしゃるんですが、そうではなくて、あくまでも「受け手と送り手のお互いが伝達あるいは交換する」ということが大事なんです。ですから、双方にきちんと伝わっていなかったら、それはコミュニケーションをとったことにはならない。たとえば、この究光塾において、私が、どれだけ皆さんに伝えたとしても、皆さんが理解していなかったら、それはコミュニケーションをしたことにはならない。私が一方的にワッーとしゃべったとしても、聞いている皆さんの頭の中に何も残っていないとか、皆さんが、嫌々時間が過ぎさるのを待っていたり、嫌々その時間を過ごしているだけの状態であれば、それはコミュニケーションを取ったことにはならない、こういうことなんです。

 

 

☑ 組織の一体感を高めるためのコミュニケーションのポイント

1.状況・課題・目標を共有化する

組織の一体感を高めようと思うと、状況や課題や目標を共有化することが必要です。たとえば、学校のクラブ活動などで、部室に「初戦突破!」とか「全国大会出場!」という掲示がされたりしていますけれども、あれも目標を共有化してチームの一体感を高めようとしているわけですよね。

会社・組織でも一体感を持とうと思うと、「状況」とか「課題」とか「目標」といったものを受け手と送り手とで、やり取りを行って共有化する。すると、それが組織内のコミュニケーションに繋がったり、逆に、コミュニケーションを用いないと、状況の共有化も、課題の共有化も、目標の共有化もできませんよね、ということです。

 

2.決定段階にメンバーを参加させる

当然全ての事柄に関して皆が決定に参加することは難しいでしょうから、極力決定する段階にメンバーを参加させるということです。以前、英語ができる方に、こういうお話を聞いたことがあります。

 

自分たちで考えた計画や目標のことを、英語では「my baby」という言い方をするそうです。自分も決定することに参画した。決定に関わったこの計画や目標は、自分も一緒になってやっていかないといけない。こう思うわけです。やはり他人の子供と自分の子供とで考えると自分の子供のほうがかわいい、ということになるわけですね。そうすると自分も一緒になって決めた計画や目標と、単に上層部から降りてきた計画や目標とでは、どちらが気になるかというと当然自分が決めた方になる。「何とかせなあかん!」と思うわけです。そういうところから自分で決めた計画や目標のことを英語では「my baby」という表現をすることもあるそうであります。

 

3.主体性を尊重し対等な立場で話し合う

主体性を尊重して対等な立場で話し合いを行うということは、組織における上司・部下の関係で言えば、「対等な立場」というのは、決して「なあなあ」でしゃべることではないです。

たとえば、小さなお子さんに対して大人が主従関係で話す場合には、「○○しておきなさい!」というように、大人が立ったままで話をするわけですが。相手を尊重しようと思えば、本当に相手に理解させようと思えば、目線を同じ高さにして、「わかるか?」と話をする。「わかった?...できる?...」と、こういう風にやるわけなんです。これが相手のことを尊重しているということなります。これが「対等の立場」ということになってくるということです。一体感を醸成しようと思うとするならば目線を合わせないといけない、というようにご理解ください。

これを実際に取り入れてやったのが、東京ディズニーランドの迷子の子供への対応です。私もよく申し上げる有名な事例です。迷子の子供さんを見つけて、やってはいけないことは、まず、後ろから声をかけてはいけない。そして、上から話かけてはいけない。相手を対等と思い、相手を尊重するならば、必ず、迷子の子供さんの正面に回って、大人がしゃがみこんで、子供の目線に合わせて話をするわけです。

つまり、組織のリーダーの立場でいえば、相手の理解力や経験値などに合わせてコミュニケーションをとることが必要になる、一体感を生むうえでは大事です。ただし、組織内では、そればかりでもいけないわけですから、主従関係をもって相手を叱るということにおいては、あえて上からものを言うことも当然必要になってきます。

 

 

☑ 説得とは・・・

 

説得とは、「説明をして納得をさせること、説明して納得してもらうこと」、こういう意味だとご理解ください。決して、何かを押し付けるというような意味合いではありません。

ですから、私が究光塾にて、こうして話をさせてもらっているのは、私は皆さんを説得しようとしているつもりではないんですが、たとえば、私が、「こういうふうに考えられますよね...」と申し上げたとしましょう。それに対して、皆さんが純粋に私の話を聞いていただいて、「そうですよね。そういう考え方がありますよね。じゃあ次はそうやってみます。」というのが「説得」なんです。つまり、説得されたか説得されてないか、を判断する一つのポイントは、次に「自発的な」行動に移るかどうか、ということです。ですから、「あぁ、そうですよね。」と言ったとしても、その人が、次に行動に移さなかったら、それは説得されたとは言いません。その人は説得されていません。

そして、もう一つのポイントとしては「継続性」です。たとえば皆さんが、本を読んだり、テレビを見たりして、「あぁ、これは良いな...」と思ってやり始めました。でも、やっていることを辞めてしまうと、それは説得されたとは言いません。「あぁ、やっぱり、こんなことやっても、しょうがないよ」と考えて結果が出る前に辞めてしまう、ということであれば、これは説得されていないということになります。

 

ですから皆さんが、説得する側の立場で考えていただくとするならば、①どういうふうにすれば、自発的に動いてもらえるか? そして、②どういうふうにすれば、継続的に動いてもらえるか? この2点を考えていただくということです。これが本来の「説得」ということ、つまり、「人を動かす」というのは、「自発的」ということと、「継続的」ということがキーワードになります。 

一方、その場で怒られないためにやっているということは、決して自発的ではありませんし、納得してやっているわけではなく、怒られるからやっているので継続もしていかない、こういうことであります。

 

実際、皆さんがこうして究光塾に参加していただいて、私の説明を聞いていただいて、それぞれ、お仕事が大変ななか、課題図書を読んで、レポートを書いて、課題もフィードバックも提出していただいているというのは、私の説明を聞いて皆さんが納得していただいているから取り組んでいただいている、こういうことだと思います。そうでないと、これだけの期間、続きません。そして、これは当然、私にも責任のあることなんですが、今日ご参加いただけていない、お二人の方については、私が説得をしきれていない、こういうことであります。

 

 

 

☑ 論語 

「為政篇」 

或るひと孔子に謂いて、曰く、「子奚ぞ政を為さざる」「書に云う、孝なるかなこれ孝。 兄弟に友に、有政に施す、と。これもまた政を為すなり。奚ぞそれ政を為すを為さん。」

 

< お伝えした内容 >

è  直接政治に携わらずとも、まず親を敬愛して祖先を大切にする、そして兄弟仲良くする、これが良い政治に繋がる。

è  『身を修め、家を整え、国治まり、天下平和になる』 ・・・ 『大学』という書物にある言葉。

「修身」まずは最小単位である自分自身を成長させて、家庭を良い状態にすることが、良い国をつくることになり、天下泰平になる。そもそも政治は何のためにあるのか、政治は天下泰平のためにある。

è  この言葉を事業に置き換えて考えると、まず自分の会社を良い会社にして、人を雇用して、税金を納めること。それで充分に社会のためになる。自分の会社を放ったらかしにしたまま、社会のため、と言って活動しているのは本末転倒。

 

 

子曰く、「人にして信なくんば、その可なるを知らざるなり。大車に輗(げい)無く、小車に軏(げつ)なくんば、それ何を持ってこれを行らんや」

 

< お伝えした内容 >

è  人として一人前になろうと思えば、嘘をつかないこと、約束を守ること、が大事である。

è  トランプ大統領が関税をかける云々をやっているのは、自身の選挙公約(約束)を守るためだという主張をしているが、これは中間選挙を控えて、自分自身の票のためにやっているというところがある。

「約束」とは、自分の都合のための約束ではなく、相手のためになる約束であることが大事になる。

 

 

 

子曰く、「その鬼に非ずしてこれを祭るは、諂うなり。義を見て為さざるは、勇なきなり。」

 

< お伝えした内容 >

è  「義を見て為さざるは勇なきなり」...人としてやらないといけないことをわかっているのに、やらないというのは心がない、という意味合い。

è  たとえば、新幹線内で鉈を振るって暴れる人間に対して、自分の命を賭して、他人を助けることができるか?

これについては、未だ、明言できる答えは出せない。

è  ただ、「自分の命を賭して」というレベルまで行かない前提で話をするならば、「他人様のためにお役に立つこと」が、人としてやるべきことである。 純粋に他人のためにお役に立つと思ってやったことが、めぐりめぐって、結果として、思いもよらぬ利益を享受できるようなこともある。

è  人間は悪いことをするから、その分、善いことをしたいと思うもの。

『人間というのは妙な生きものよ。悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事を働く。』

(『鬼平犯科帳』のなかに見られる一節)

 

 

▼ 次回までの課題ご説明 

1.「受講報告書」について

ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。

この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。

究光塾開催の翌週の月曜日(7月30日)を最終納期でお願いいたします。

 

2.「振り返り」をメーリングリストにて、直接、全メンバーに送信してください。

平成30年7月29日(日曜日 23時59分59秒)を期限として送信をお願いいたします。

①   本日の内容から得たこと 

②   (今月の参加により)取り組むことと決めたこと【エクセルファイル】

「顧客の増加を前提とした売上の増加」を実現するための

     1.組織レベルの業務に直結するもの

     2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

③   その他(感想、質問、講師について等、自由に。ただし必須)

 

3.ご自身に対する他の受講メンバーからの『相互フィードバックシート』のコメントへのフィードバック(返信・回答)

についても、上記2同様、7月29日(日曜日 23時59分59秒)を期限でお願いいたします。

 

4.平成30年8月19日(日曜日 23時59分59秒)提出期限の課題について

A)    『読後リポート』

 対象図書は、『数学受験術指南』 中公文庫 森毅(著) です。

B)    上記課題図書に関する 「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる課題と解決策の検討(3項目)

C)    これまでに設定した取組課題【エクセルファイル】についての進捗状況・振り返り

 取組課題【エクセルファイル】は、2種類ございます。

 ①     課題図書から抽出した「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる課題と解決策(3項目)

 ②     (今月の参加により)取り組むことと決めたこと

      「顧客の増加を前提とした売上の増加」を実現するための

      1.組織レベルの業務に直結するもの

      2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

< 第二十四回 究光塾へ続く・・・ >

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