究光塾リポート

第二十回 究光塾リポート

2018年05月08日

<第二十回 究光塾 実施内容(講義の流れ)>

1.【ディスカッション】 「組織の方向性」と「個人目標」の繋がりについて

前回(第十九回)の究光塾では「顧客から見た価値」について考えていただきました。今回の究光塾では「どうして組織レベルの課題を考えて、個人レベルの課題が必要なのか?」をご確認いただくため、受講者の皆さんにディスカッションを通じて考える時間をお持ちいただきました。

 

2. マネジメント講義

 

3.次回までの課題 ご説明 

 

【講師 中村よりお伝えしたこと(抜粋)】

 

☑ ボトムアップ・トップダウン 

一般的な経営管理という観点でお話をいたしますと、組織というのはボトムアップで、まずは現場からの情報を上げていくわけです。「お客様はこういうことをおっしゃっていますよ、だから、こういうことやらないといけませんよ、ああいうことやった方がいいですよ・・・」という情報をボトムアップで上げていくわけなんです。その情報を経営陣が咀嚼をして、「じゃあ、こういう方向性でやっていこう、ああいうことをやっていこう」というのが良いわけなんです。もし、現場のことをわからない経営者がいらっしゃったとして、その人が思い込みで、現場に対して自分の指示を落していくと、顧客から見た価値は現場にこそあるわけですから、ズレが生じてくることになるわけです。

現場からしっかりと情報が上がってくる、現場から質の高い情報が上ってくるためには、その担い手は現場の人材になりますから、現場の人材のレベルに掛かっているんです。ですから、人材を育成して、顧客に近い階層(=現場)の人たちをしっかりさせないと、ボトムアップで顧客の情報・現場の情報があがってこないことになるわけなんです。

そして、現場から上ってきた情報をもとに、トップが正しい判断をしていく、これが経営者の仕事であると言えます。組織レベルのことを考えるのは経営者なわけですから、経営者がボトムアップされた情報をしっかりつかみ取って、またトップダウンとして方針を示していく。噴水をイメージしてみてください、下の部分の水を上まで吸い上げて、噴出してまた下の部分に水を戻していく。もし、下からの水を止めてしまうと、噴出させる水は枯れてしまうわけなんです。

 

 

☑ 理念に基づいて・・・

「理想論だ」「模範解答ですね」と言われば、そうかもしれませんが、会社は理念に基づいてやる、私はこれだと思います。理念に基づかないことには説得力がありません。理念に基づかないことをやっても、うまくはいかない。理念に基づかないことは、単なる「お金もうけ」になってしまいます。

キレイごとで経営理念をつくっている会社はあるんですが、そこで働く従業員が自分たちの仕事に置き換えて理念を実現しようと考えて行動しているかどうか、そして経営幹部が理念に基づいて事業をやって行こうとしているかどうか、これは言葉で言うほど簡単なことではないと思います。そこでは一つ言えるのは、経営者に対する尊敬や信頼がベースとなって、理念が組織に浸透する、理念の言葉が従業員一人ひとりの心に落ちるのだろうと思います。

 

では、どうして経営者に対する尊敬や信頼が生まれるか・・・

これはある企業グループのトップに対する、その経営幹部の方々の弁になりますが、そのトップの方は世間一般で誰もがその名称を知っておられるような企業グループのトップの方ですから、個人の保有資産だけでも座っているだけで、とんでもない金額のお金が入ってくるような方です。その経営幹部の方々の弁として、「うちの○○(トップの方)は、ほんとに仕事に真面目なんですよ。未だに寝ずに働くんです。ほんとうに仕事に対して真摯で真面目、自分が先頭立って仕事をしているんです。だから、我々もやらざるをえないし、着いて行けるんですよね・・・」ということをおっしゃっていました。

 

 

☑ 「doable」と「deliverable」

「doable(ドゥアブル)」は、「自分ができること」という意味になりますね。仕事においては、「doable」ではダメです。お客さまが求めている「自分ができること」なら良いですが、「自分は自分のできることをやるだけです」とおっしゃる方がいますが、それでは「あかん」ということです。

「deliverable (デリバブル)」という考え方があるそうです。この考え方が大事です。「delivery」というのは、一般的には「配達する」とか「届ける」という意味ですが、その名詞に「able」が付いた「deliverable」は、「提供することができる」という意味になります。

つまり、「お客様に提供できること」「お客様に受け取ってもらえること」に注力しないといけない。「自分ができることをやりますわ・・・」というのは押し付けているに過ぎないんです。そうではなくて、お客さんが受け取ってくれるものをきちんと提供しないといけない、仕事においては、この「deliverable」という概念が必要です。お客さんが「いらない」と言っているものを、いくら「私はこれができますから」と言っても、これではダメであって、あくまでも、お客さんが喜んでくださって、お客さんに受け取ってもらえることをやっていかないといけない。そこでは「顧客から見た価値」というものを考えることが重要となります。

 

 

☑ 「忖度」と「直言居士」

たとえば、経営者が示す方向性に対して、(その経営者がどちらかといえば私利私欲に走っていることを分かっていて)経営者の意向に沿おうと、「それ、やりましょう」というのは、今、流行っている「忖度」ということになります。そうではなくて、「直言居士」といって、「それは、今、ダメですよ、やるべきでないですよ」と進言することが必要になります。昔、中国の皇帝などは、自分に対して厳しい意見を述べる人を、必ず、傍に置いていた。そういう役職があったと言われています。それに対して、日本の政治というのは、どちらかと言うと、「おっしゃる通りでございます、その通りでございます」と周りが言う。学者も、いわゆる「御用学者」と言われるような人たちが周りを占めている、こういうふうなことが多いですね。

ですから、本来、経営者に対して、「社長、それはあかんでしょ!」と言ってくれる人が居ているというのは、幸せなことなんですけれども、それに気付かない経営者もいらっしゃいます。

 

 

☑ 組織は全体最適を目指すべき

中村:ディスカッションのなかで、Aさんは、「私、個人の場合は、私が所長を務めるB営業所をきれいに回す」とおっしゃいました。「きれいに回す」とは、どういう状態をきれいに回す、ということでしょうか?

 

Aさん:組織のメンバー全員が同じように休みを取れる状況をつくるというのが、私が一番初めにしないといけないこと、すべきことだと思います。自分が所長であるB営業所と、他の営業所とで、同じお給料で休む日数、勤務の時間が大きく違うというように感じたので、それは、私が他の営業所に応援に回ってみて、しばらく勤務をしていて感じたことなので・・・。B営業所への負担が大きいな、と感じたもので、もちろん他の営業所でも休みを取れていないところはあるんですけど、まず今できるのは、自分の営業所の休日、勤務時間だと思ったので・・・

 

中村:まず、「自分ができるところ」とおっしゃいました、これはダメですね。会社の方針として、それが降りてくることが大切です。会社の方針として、「人の定着率が悪い」「すぐに人が辞めていく」、だから、その問題を解決するための一つの施策として、メンバー皆が休むことができるようにしていく、そのなかでもB営業所の負担が大きい、だから、まずはB営業所を重点的に、B営業所のメンバーが休みを取れるように、会社のメンバー皆が、他の営業所もB営業所に協力をしてやっていけ、というのであれば良いでしょう、うまく行くことでしょう。でも、それが、単独で、自分の営業所だけ、となると、同じことをAさんが言っていても、他の営業所との軋轢が生まれてくると思います。

 

組織レベルの課題を先に取組まなければならない、というのは、どういうことかと言いますと・・・

「組織は全体最適を目指さないといけない」 こういう部分があります。実際、あちらを立てればこちらが立たず、ということが起こります。全部が全部、並行してうまく行く、というようなことはありえないんです。

 

そうすると、たとえば、B営業所を優先するのか? C営業所を優先するのか? を考えるのが、これは経営者の判断ということになってくる、こういうことなんです。それを、Aさんに対して、「Aさん、B営業所が大変なことは分かっているけど、今は、C営業所の方を優先したいので、今回はB営業所は我慢してほしい」であるとか、「B営業所を先に取り組むから、Aさん、どういうことに困っているんですか?」ということをやっていくのが、経営者の仕事、組織レベルの仕事になります。

ですので、まずは組織レベルということが絶対的に先にこないと、組織というのは回りませんよ、ということなんです。「自分たちのところだけ良ければ良い」と、Aさんが言っているわけではないと思いますけれども、結果的に、うまく行かなくなる、軋轢が生まれることになってしまいかねない、ということです。

たとえば、「他の営業所に応援に行ってやれ」ということも、上位者が考えないといけない。その大もとになっているのは、結局のところ、理念」というものが判断基準になってきますよ、ということであります。「何を基準に判断すれば良いのか?」「何を根拠にして決めるのか?」というのが、キレイごとではない・単なるお題目ではない、本当に向き合って考えている「理念」というものになってくるのだろうと、私は考えています。ただし、それも、「そんなもん、キレイごとや・・・」とおっしゃるなら、そういう方に対しては、私は「おっしゃるとおりですね、キレイごとですね」としか申し上げようがないです。

 

「お客様から見たときに、どうなのか?」を考えていただくことが大事なのであろうと思います。お客さまの立場から見て、「良いよね、この会社は良いですよね」と言ってもらえるように見えているのかどうなのか、ということになります。当然ですが、世の中すべての方々に満足していていただくことは不可能なわけですから、「当社は、こういうやり方を大事にしているから、これに満足してもらえれば良い。こういうやり方に満足してもらえるお客様が、うちのお客様になってもらえれば、それで良い」と経営者なりが考えられたなら、それが「理念」になってくるということです。

かつまた、それが、マーケティングということになってくる、ということです。理念がないのに、マーケティングはありえないですし、戦略がないのに、マーケティングはありえないです。我々にはこういう理念があるから、我々はこういう方々にお客様なっていただきたい、ということがあるのであって、単に儲かるから、こういう方を相手にしようか、というのでは続かないですし、組織も発展していかないのではないか、と思います。

 

これは、私、中村経営講究社にとっても同じことでありまして、こういうお話をしても聞いていただける方が世の中にはいらっしゃるので、私も生活をして、会社をやっていけている部分があります。こういう話を理解していただける方が、当社 中村経営講究社のお客様になっていただいている、そこに行きつくということです。「お前の言うてることはキレイごとや。そんな巧いこといくかいな、お前の言うてることは所詮、机上の空論や!」という方々には、当社のお客様になっていただくのは難しいのだろうと思います。

そういう意味で、経営者の思っている方向にしか組織は動かない」と思います。ビジョンであったり、「こんなことやりたい」という想いがあって、それを実現しようと思って、手段が出てくる、実現するための方法を考えるわけですから・・・。でも、経営者のやりたいことだけで良いのかと言えば、そこで、人間というのは横着になったり、自分の都合だけになったり、自分がお金をもうけるということだけを考えたりするので、理念とか倫理観が必要になる、ときにはブレーキの役割を果たすことにもなる理念や倫理観が必要になるのだろうと思います。

もう一度まとめますと・・・、どうして組織レベルのことが必要となり、それをどうして個人に落し込むのかと言えば、以前お話したとおり、「目標の連鎖」というところに行きつきますが、やはり企業というのは、理念をもとに方向性が決まるということです。そこでは、経営者は幽体離脱をして、自分の組織を見ることが必要だと思います。経営者は、誰も自分に対してモノ申してくれませんから、余計に自分の組織であったり、自分自身のことを客観的に見るということを、上に立てば立つほどやっていかないといけないんだろう、と思います。それが仕事に対して真摯であるということ、仕事に真面目に取り組むという姿勢にも繋がってくるのだろうと思います。

そしてどうして個人の目標があるかと言うと、個人の目標を設定する目的は、組織の目標を達成するためにあるわけですから、そうすると組織の目標のレベルをしっかりと構築しないといけない。組織レベルの目標は、何のためにあるのかというと、究極は理念を実現するため、というお話は、これまでしてきたとおりであります。

そして、理念は何のためにあるのか、といえば、企業や組織を存続させるためなんです。企業や組織を存続させる絶対的な条件・必要なものは、顧客の存在でありますから、理念は顧客の方を向いたものであることが必要であり、「顧客から見た価値」をもとに、組織レベルの目標を考えていただき、個人レベルの目標に落し込んでいただくことをお願いし続けているということであります。

 

 

☑ 「指導」と「育成」

指導・育成と言いますが、そもそも指導と育成とは、こういうふうな概念だと考えてください。

「指導」というのは、指導は日常的な概念になります。そして「育成」というのは、計画的な概念になります。 対象者を日常的に指導していくなかで、「この人は、こういう良いところはあるけれども、こういうことが不足しているなぁ、こういうことが欠けているなぁ」ということを掴みとって、計画的に育成する、育成計画を立てるわけなんです。日常の指導では、どうかしようにも難しいものを、計画を立てて育成をしていこう、と考えるわけです。

で、こんどは、育成計画というものがあって、その計画を日常の指導のなかで、チェックをしていくわけなんです。「ちゃんとできるようになっているだろうか? 育成計画どおりに成長してくれているだろうか?」ということを確認していく。これを日々のお仕事のなかでやっていくのが、いわゆるOJT(On-The-Job Training)ということになります。

「指導」と「育成」.pdf

ですので、OJTというのは、「とりあえず、この仕事やっておいて・・・」というものではないということです。あくまでも計画的に、「こういうふうなことができるようになったら、次はこういうことを・・・」「こういうふうなことができるようになったら、次はああいうことを・・・」というように、計画というものが前提としてあるんですよ、ということなんです。

そして、たとえば究光塾のような、こういった勉強会は、Off-JTと言います。OJTに対して、Off-The-Job Training、職場から離れたかたちでの教育ということであります。このOJTとOff-JTの関係というのは、あくまでもOJTでは勉強できないことを、こうして集まってやっていただいているわけなんです。OJTがまず中心にあるわけです。

ですから、こういう勉強(=Off-JT)というのも、あくまで仕事の現場で活かしていただくためにやっていることなんです。あくまでも、Off-JTは、OJTを援助するものでしかないんです。ですから、皆さん方が、現場で成果・結果を出していただけていなかったら、これは私がここで勉強していただいている意図、目的が達成できていない、こういうことなんです。「課題を考えてください」と申し上げた課題がきちんと現場で実行されていたりとか、それで現場が変わるような働きかけをしていただくと、このOff-JTが役に立っているということになるんですね。

 

 

 

< 次回までの課題ご説明 >

1.「受講報告書」について

ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。究光塾開催の翌週の月曜日(4月30日)を最終納期でお願いいたします。

 

2.「振り返り」を全メンバーにメール送信してください。

4月29日 日曜日(23時59分59秒まで)までの配信をお願いいたします。

 ①本日の内容から得たこと 

 ②今月の参加により取り組むことと決めたこと 

     顧客の増加を前提とした「売上の増加」 を実現するための

     1.組織レベルの業務に直結するもの

     2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

 ③その他(感想、質問、講師について等、自由に。ただし必須)

 

3.ご自身に対する他の受講メンバーからの『相互フィードバックシート』のコメントへのフィードバック(返信・回答)についても、上記1同様、4月29日 日曜日(23時59分59秒まで)でお願いいたします。

 

4.平成30年5月20日 日曜日(23時59分59秒まで)提出期限の課題について

①課題図書『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』に関する読後リポート、

②上記課題図書から抽出した「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる 課題と解決策の検討(3つ)

③これまでに設定した取組課題の進捗状況

 

5.平成30年5月27日 日曜日(23時59分59秒まで)提出期限の課題について

①『OJTについて』

②『相互フィードバックシート』

 

< 第二十一回 究光塾へ続く・・・ >

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