究光塾リポート

第十八回 究光塾リポート

2018年03月22日

<第一八回 究光塾 実施内容(流れ)>

1.取組み課題 相互フィードバック 今後の進め方について

2.講義(マネジメント) 

3.論語

4.次回までの課題 ご説明 

 

1.     取組み課題 相互フィードバック 今後の進め方について

今月の究光塾より、相互フィードバックのやり取りの方法を変更することといたしました。具体的には、他のメンバーからのフィードバックコメントに対する受講者ご本人とのやり取りは、当受講時間内では行ないことといたします。当受講終了後に、メーリングリストでのやり取りをしていただくことといたします。限られた受講時間を、より効率的に使っていくことが、この変更の目的であります。

 

講師 中村よりお伝えしたこと(抜粋)】

 

☑ 建設的とは・・・

今後、受講者間において、メーリングリストでの相互フィードバックシートのやり取りを行っていただくなかで、受講者の皆さんに持っていただきたい姿勢は、まず第一に、「建設的な言葉を使うようにしてください」ということです。

 

建設的とは、「積極的にものを作り出し、よくしていこうとするさま。現状をよりよくしていこうと積極的な態度で臨むさま」です。

ですから、たとえば、他のメンバーから指摘やアドバイスを受けたことに対し、「イヤー、これは無理なんです、できないんですよ・・・」という返答は建設的ではないですね。ご自身が課題としてあげていることに対して、他のメンバーからアドバイスのコメントをもらっているわけですから、「では、こういうふうにやっていこうと思います、こういうふうに考えていこうと思います。」という返答が、建設的な姿勢だと言えます。非建設的な言葉は厳禁、NGといたします。

 

 

『巧言令色 鮮し仁』 ということを常々申し上げています。

綺麗な言葉というのは、実は、本当のところは、相手のことを想っていない、ということが考えらます。何も厳しいことを言うことだけを良し、と申し上げているわけではありません。しかし、相手に対して関心を持っていれば、指摘するべきところはきちんと指摘をするということです。ですから、本来フィードバックとしては、「良いところ」と「悪いところ」が書いてあることが、一番良いフィードバックだと言えます。「こういうところは良いと思いますけれども、こういうところは変えられた方が良いと思います」という具合に・・・。良いことだけを述べているというのは、それは基本的にフィードバックではないと思います。それは、相手に関する関心があるのだろうか?本当に相手に良くなって欲しいと思っているのだろうか?と私は疑問に思います。

どうして私がこういうことをお願いするかと言えば、皆さん方には、人を見る目というものを養っていただきたい、と願っているからです。我々 究光塾のメンバーというのは、どなたもが、リーダー、周りに良い・悪いの影響を与える人だと思います。ブスッとした表情をしていれば気分の悪い影響を与えることになりますし、ニコニコしていれば良い影響を与えることになります、影響力という観点で言いますと、上から下だけの影響だけではなくて、360度に影響を与える存在であるということ。そしてまた、影響力はプラスの影響だけではなく、マイナスの影響もあるわけです。そうすると対人的な観点もきちんとお持ちいただくことが大事です。

巧言令色-「素晴らしいですね!」「凄いですね!」ということだけ言っているのが、ある意味 面倒くさくないんです。一番 手っ取り早いコメントであるわけです。でも、それは本当に相手の良いところを観ているのだろうか?と思います。「素晴らしいですね、でも、こういうところを変えると、もっと良くなるんじゃないですか?」とコメントを付ければ良いわけなんです。しっかり関心を持って他人を見ていただくこと、そうでないと、他人に関心を持てない人は他人からも関心を持ってもらえません。特に、最近、進化するAIの情報を見れば見る程、「人と人との繋がり」というものを考えていくことをしていかないといけないのではないか。そうしないと、これからの世の中で本当に生き残っていけないんじゃないか、と強く感じるようになってきました。

 

以前にもお話しましたが、脳科学者の茂木健一郎さんの著書を読んで、「あぁ、なるほどなぁ」と思ったのは、クリエイティブ 創造性というのは、年齢が高い人の方が高くなるんですよ、ということです。何故かといえば、普通に考えてみてください。「若い人の方が創造性が高い」と仮定したとしましょう、じゃあいったい「若い」って、いくつから「若い」というのか?という話なんです。極論言えば、「若い人の方が創造性が高い」とするなら、生まれたての赤ん坊が一番、クリエイティブ、創造性が高いということになってしまいますよね・・・。

茂木健一郎さんがおっしゃっているのは、創造性、創造力というのは、二つの要素から成り立っていて、それは、「経験」と「やる気」ですよということ。で、本来、年齢が高ければ高いほど、経験というものがある。でも、どうして創造性が発揮されないかと言うと、「やる気」、つまり「もう私は歳だから・・・無理だ、創造なんてできない・・・」となってしまっているから、新しいことに取り組んだり、新しいことを考えることを否定していることになってしまっている、こういうことなんです。

 

ただし、この「経験」というものも考えてみると、これはこれで単に時間を過ごしただけでは経験にはなりません。経験とは、「熟考」、しっかりと考えるからこそ、経験になるということなんです。たとえば、私自身の事例で言うと、このところ私は毎週のように新幹線で京都-東京間を往復しています。で、もう慣れていますから、新幹線に乗ると、仕事を始めるか、睡眠をとるか、どちらかです。京都を出発して、気が付くと品川駅に着いています。そうすると、はたしてそれは新幹線に乗った経験かと言うと、それは経験ではないわけです。たとえば、窓から流れていく景色を見て速度を感じるとか、座席の揺れなど乗り心地を在来線と比べてみるとか、そういうことを考えるから、新幹線に乗った経験があると言えるわけですね。でも、私の場合、新幹線に乗って寝ているだけというのは、他のところでも寝ることはできますし、仕事をするのでも事務所ででもできることをやっているわけですから、それは新幹線に乗った経験にはなりませんよ、ということ・・・、これは、ミンツバーグだったかな、アメリカの学者が言っています。その時間をどう過ごすかが、その時間が経験になるかどうかということに繋がっている。そうすると、「考える」ということが経験になります。そして、この「経験」というものをしっかりとしている人は、「どうしたら良いのだろうか?」という建設的な「やる気」が出てきますので、創造力が生まれてくるというのが、言われていることのようであります。

そしてまた、この相互フィードバックというのは、自分の観点だけで振り返って考えただけだと、その経験に偏りが出てきますので、他の人の観点も合せて振り返ると、「ああ、こういう見方もできるのか」「そうか、こうやれば良かったのか」と、さらにその経験が深まっていきますね、ということであります。

 

しかしながら、最近は、AIの開発のスピードが速くて、AIのできることがどんどん増えていっています。7~8年位前までは、今、話していた「経験」×「やる気」=「創造性」くらいが、AIに勝てる部分ではないか、と言われていましたが、これも最近では変わってきています。過去の膨大なデータをAIに覚えさせることによって、たとえば、将棋の名人というのは、自分の指した将棋の棋譜が頭の中に入っている、つまり自分の「経験」が頭の中に入っているから凄いと言われますが、AIに80億にも及ぶ将棋の局面を学ばせることによって、つまり、AIに「経験」させることによって、AIが将棋の名人を負かすところまで進化しています。そうすると、もう「経験」の面でも人間はAIに太刀打ちできなくなってきているのではないか?

脳機能科学者のなかには、人間がAIに勝てるのは、もう「やる気」の面だけだと言っている・・・AIに「やる気」を出させるのは難しい。AIは、スイッチであるとか、「動かす」といった外部からの圧力を掛けないと動かないけれども、人間というのは自分で自分を動かすことができる、つまり、自発的な「やる気」の部分というのが、現状、人間がAIに勝る唯一の部分になっている。そういうコメントをしている方もいらっしゃいました。

 

また、AIを開発しているディープラーニングの研究者の書籍を読んでみると、(もちろん、将来的にはこれも解決することかもしれませんが)現状、AIが実現するのは難しそうだと考えられているのは、こういうことでした。

先程も申し上げたとおり、過去の膨大なデータをAIに記憶させたり、理解させたりすることはできるんだけれども、我々もそうなんですが、我々がものを認識するには、過去の経験と組み合わせることによって認識しているそうなんですね。

たとえば、このサインペンを持って、ここで手を放すと・・・・・・ペンが机の上に落ちて、「カチャ」という音がしました。この「カチャ」という音というのは、我々人間は、音が鳴ってから認知しているわけではないんです。私が手を放す前から、このサインペンの素材について、皆さん方は想像しているわけなんです、「プラスチックでできてるなぁ・・・」という具合に。それで、このペンが落ちる前に、我々は過去の経験から、こういう素材ものが机のうえに落ちたらどういう音がするかを知っているので、その経験を繋げて自分で勝手に音の認識をしているそうなんです。ですから逆に、自分が全く知らない素材が落ちるときには、どんな音がするかを分かっていない・知らないので、過去の経験とを合わせもって、「ああ、こんな音がするんだなぁ・・・」という具合に、経験している音とは認知するスピードが全然違うということが、実験で明確になっているんです。

つまり、人間というのは、経験したことのないことに関して、過去の経験と擦り合わせながら、新しいことを考えることはできるんだけれども、現状、AIにそうしたことを考えさせるというのは技術的に非常に難しいそうなんです。つまり、過去に全く経験のない事柄に対して、ものを考えるということくらいしか、人間がAIに勝てることはないかもしれない、というのがAIを開発しているディープラーニングの研究者のコメントでした。

ですから、私が「建設的に・・・」ということで「積極的にものを作り出しよくしていこう」とお話しているのも、「過去の延長線だけでなくて、これから先、何をやっていくのか、を建設的に考えてくださいね」とお話をしているのも、根性論とかそういうことではなくて、今の社会環境から考えると、よく言う「AIに使う立場になるのか、それともAIに使われる立場になるのか?」ということ・・・で、『私は、AIに使われる立場の方で良いや・・・』と考えていると、AIにも使われなくなってしまうと、そのディープラーニングの研究者は言っています。

 

 

☑ 言葉の使い方について

今後、受講者間において、メーリングリストでの相互フィードバックシートのやり取りを行っていただくことに向けて、受講者の皆さんにお伝えしておきたい、もう一つの重視していただきたい姿勢は、言葉の使い方であります。

我々、ものを考えるときには、言葉というものを使って考えているわけです。そうすると、曖昧な言葉の認識で、果たして深くものを考えることができますか?

ということなんです。

たとえば、皆さん方から提出いただいている課題をとってみても、皆さん方それぞれに、言葉・単語・文章を書いていただいていますが、「この言葉をあなたはどういう意味合いで使っていますか?」と私が質問していった場合に、明確に説明することができるでしょうか?・・・そうすると、皆さん、「いやー、中村先生は、そういうところに厳しいから・・・」とおっしゃるかも知れません。でも、こうした内容は、私のために書いているわけではないんです。皆さん方が、自分のために書いているわけです・・・。自分で説明できない言葉、説明が付かない言葉を使っているということは、自分の頭で考えていないということです、それでは行動に移すことはできません。

たとえば、「検討する」「考える」「確認する」「伝える」「相談する」「調べる」「促進する」・・・いわゆる政治家の方々がお使いになるような、「前向きに善処する」というような言葉を使うのはやめましょう、ということです。「前向きに...」とは具体的にどういうことですか? 「善処」とは具体的に何をどうすることですか? こういうふうに具体的に考えることをしないと、具体的に行動することが生まれてきませんよ、それは考えたことにはなりませんよ、ということなんです。そして、我々が考えるというのは、言葉を使って考えるということになります。そして、しっかり考えるということは、「根拠を明確にする」というところに、現状、私は行き着いています。

 

AIが予想をはるかに超える速度で進行しているなかで、我々が、「考える」ということを辞めてしまうと、本当に世の中から置いていかれるんだろうと思っています。なぜなら言葉というのは、自分の思考のためだけではなくて、自分が考えているのは何のためか?というと、社会で生活するためなんです。社会で生活するということは、自分の考えていることが他人に伝わらないと、社会で生活することはできないんです。つまり、他人に理解していただけるような言葉を使わないと、きちんとした言葉を使ったということにはならないんです。

皆さん方が、一番近しい、同僚であったり、部下であったり、上司に対して、明確な言葉、誰にでもわかる言葉を使わないと自分の考えていることは伝わりません。リーダーシップというお話をした際、リーダーの成長プロセスということで、リード・ザ・セルフ、リード・ザ・ピープル、リード・ザ・ソサエティ、というお話をしたと思います。まずは、リード・ザ・セルフ、自分で自分をコントロールしたり、自分で自分を引っ張っていけるようにならないとダメですよ、というお話をしました。それを、一つの側面から言い換えると、自分で自分が行動できるように明確な言葉で思考すること、これがリード・ザ・セルフに繋がるのではないか、と考えています。そこで、自分自身が動かないといけないのに動かないとか、動きたくないというのは、自分で自分のことを説得できていないわけなんです。どうして説得できていないのかとか、「やりたくない、嫌だ」とかといったことも、我々は、すべて言葉で考えているわけです。たとえば、「嫌なものは嫌です...」と言っていることでも、何故、嫌なのか? 「嫌」の定義を考えずそこで思考をやまてしまっているから、解決策も見えてこないということなんだろうと思います。

そして皆さん方は、この究光塾に参加されるくらいの方なので、リード・ザ・セルフはできておられても、つぎのプロセス、リード・ザ・ピープル、直接的に接点のある方々に対して、影響を与えたり、リーダーシップを発揮していくことを考えると、言葉を使って伝えていく、他人を動かす言葉を使っていかないといけない、こういうことです。

 

ですから、先程あげた言葉の他にも、「迅速化する」「簡素化する」「遂行する」「浸透する」「図る」「調整する」「検討する」「合理化する」「円滑にする」「勤める」「強化する」「徹底する」「効率化する」「共有化する」といった言葉も辞めてください。・・・「それじゃ、何も言葉が使えなくなるじゃないですか?」とおっしゃるかもしれませんが、違うんです。たとえば、「共有化する」とか「徹底する」というのであれば、「今、この状態であるのを、この状態にします」というふうに書いていただいたら良いだけですよ、ということなんです。そうすると、おのずと文字数は増えてくると思います。一行や二行の文章では、まず終わらないと思います。

 

結局のところ、私が何を言いたいかと言うと、「折角、皆さん、こうして貴重な時間を使っていただいているのですから、やっていることで成果を出せるようにしましょう!」 そこを目指している、それだけなんです。「成果を上げるためには、こういった考え方のアプローチをしましょう」ということであります。これまで、なかなか成果に繋がらなかったりとか、「取り組んだけれども結果出ませんでした」というのは、「何をやるか」であったりとか、「どう実行するか」というところが曖昧なままだったので結果に繋がっていない、こういうふうなことであります。

だから、今までは「やる気」という部分のお話もしてきましたけれども、もちろん「やる気」というものは皆さん方にあると信じています。けれども、それが結果・成果に繋がらないというのは、ここの思考の部分の問題であろうと・・・。そして、これは外から言われてできるものではなくて、自分でしっかり考えていただくことをしないと、きちんとした結果にはならないだろうと思います。

 

 

2.     講義 

マネジメントの体系的な概念を学習していただくため、他の受講者の方々とグループ討議をしていただきました。グループ討議では、個人の意見を発表したうえ、グループの統一見解を出すことをお願いしました。グループの統一見解については、多数決で決定するのではなく、各自が自分の意見を根拠を持って発表し、グループの統一見解を導き出していただくようにお願いしました。

 

 

3.     論語 

「為政篇」 

 

子曰く、「由よ、汝にこれを知ることを誨えんか。これを知るをこれを知るとなし、知らずを知らずとなせ。これ知るなり。」

 

< お伝えした内容 >

è  孔子も「無知の知」と同様の教えを説いている。

 熟知していることを「知っている」として、きちんと知らないことは「知らない」とする。

 論拠・根拠を明確にすること、論理的に考えることに通じる。

 

 

 

子張、禄を干めんことを学ぶ。子曰く、「多く聞きて疑わしきを闕き、慎みてその余を言えば、則ち尤め寡なし。多く見て殆きを闕き、慎みてその余を行えば、則ち悔い寡なし。言、尤め寡なく、行い、悔い寡なければ、禄その中に在り。」 

 

< お伝えした内容 >

è  沢山の人の話を聴いて、納得できないことはひとまず置いておけばよし。

 知ったかぶりをせず謙虚に、納得のいったことだけを言葉にしていれば、失敗することは少ない。

 見聞を広め、本を読んで、慎重に行動すれば、後悔することは少ない。

 発言に失敗が少なく、行動に後悔が少なければ、結果として給与も伴ってくる。

 

 

哀公問うて曰く、「何を為さば則ち民服せん」 孔子対えて曰く、「直きを挙げて之を枉がれるを錯けば、則ち民服せん。枉がれるを挙げて之を直きに錯けば、則ち民服せず。」

 

< お伝えした内容 >

è  正しい人を引き立てて邪悪な人の上に置けば国民はついてくるが、邪悪な人を引き立てて正しい人のうえに置くと国民は従うことはない。

 

4.     次回までの課題ご説明

 

▼ 「報告書」について

ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。究光塾開催の翌週の月曜日を最終納期でお願いいたします。

 

▼  「振り返り」を全メンバーにメール送信してください。3日以内(木曜日)の送信をお願いいたします。

① 本日の内容から得たこと 

② 今月の参加により取り組むことと決めたこと 

   顧客の増加を前提とした「売上の増加」 を実現するための 

1.組織レベルの業務に直結するもの

2.1の取組実現に必要となる自己の取組課題

③ その他(感想、質問、講師について等、自由に。ただし必須)   

 

▼  ご自身に対する他の受講メンバーからの『相互フィードバックシート』のコメントへのフィードバック(返信・回答)は、今回については5日以内(土曜日)といたします。

 

   

▼  平成30年3月18日(日)提出期限の課題について

1) 課題図書 『失敗の本質』の 「読後リポート」 1,600文字以上

2) 「自己の成長」と「顧客の増加を前提とした売上の増加」に繋がる 課題と解決策の検討(3つ)

ひとつの課題につき、①課題、②実行方法、③達成手段、④目的、⑤期日を明確にしてください。

課題として設定した建設的根拠・理由を明確にしてください。

課題の表現については、「6W3H」「SMART」の観点を用いて設定をしてください。

 

< 第一九回 究光塾へ続く... >

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