究光塾リポート

第十一回 究光塾リポート

2017年08月07日

<第十一回 究光塾 全体の流れ>

 

1.先月の取組み課題レポートについて

2.次月までの課題について

 

 

1.取組み課題レポートについて

 

今月の課題図書 『ムハマド・ユヌス自伝(上)』の「読後及び取組課題レポート」に寄せられた他の受講者からのフィードバックコメントに目を通していただいたうえで、ご本人からコメントを発表していただきました。

また、前月の課題図書 『小倉昌男 経営学』について、再提出をお願いした受講者の方々には、あわせて再提出分についてもコメントを発表していただきました。

 

【各受講者からのコメント発表を受けて、講師 中村よりお伝えしたこと(抜粋)】

 

 

◆「可変領域」とは...

課題として設定していただくのは、自分の権限の範疇内で、自分自身が意思決定して、自分自身の権限で行動できるものを記述していただかないと、行動には繋がりません。これを「可変領域」と言います。つまり、自分で変えることが可能な領域を課題としないと、それは本質的な課題にはなりません。

やろうとしない人というのは、自分が行動を起こすことによって変えられる以外のところを課題に挙げるんです。逆に言えば、「それがあるからできないんです...」と言いたいがための、理由づけの課題をつくるわけなんです。本当に自分でやろうと考えている人は、自分のできる範疇内から選んでくる、こういう傾向があります。

ですから、この究光塾で設定いただく課題については、可変領域、自分自身が行動を起こす、自分自身が何か取り組むことによって変えることができるものを挙げる、ということを絶対的な条件としてください。

 

また、皆さん方のレベルが上がってくると、自分の上司に対して「こういうことやりたいです」とか、「こういうことをやっていかないといけないと思います」ということを提案していくような場面も、当然、今後、出てきます。皆さん方も、人の上に立つ立場でいらっしゃったらご理解いただけると思うんですが、たとえば、下の立場の者 自身が、自分の権限エリアのなかでしっかり行動できていないのに、上司に対して、「こうやるべきですよ」「ああやるべきですよ」と言ってきても、誰も聞く耳持ってくれませんよ、ということなんです。まず、自分のできる領域=可変領域のところでしっかり実行をするから、上司に対して意見を伝えても聴いてもらえるようになる、こういう流れになります。

 

 ◆ 課題設定について

設定する課題の記述については、何度も申し上げますが、6W3Hであったり、SMARTの観点を持ってください。そして何よりも、この究光塾の他のメンバーからのフィードバックコメントとして、「○○さんが設定された課題について、私は専門外だから・異業種だから、理解ができない、分からないのですが...」というコメントを書かれないような課題の書き方をしていただきたいんです。

それは、「そういう課題を選んでください」ということではなく、自分の課題を相手に分かり易く説明するということです。たとえば、私は運送業が専門ではないんです。でも、「この課題とは、こういうことなんじゃないですか?」と説明できるのは、なにも「私が、頭が良いからだ」ということではなく、「この言葉の定義って何なんだろう?」「具体的に行動に置き換えると、どういうことなんだろう?」ということを頭で考えて、それを投げかけているにすぎないわけです。

直接的にそのお仕事をなさっていない方が見ても、分かるような内容・表現になっていれば、これは「実行性が担保されている」「実行できることへの期待が持てる」と言えるでしょう。「究光塾の他のメンバーが、自分の設定課題を読んだときに、これで意味が分かるだろうか?これで意味が伝わるだろうか?」ということを意識していただきたいんです。というのは、この究光塾のメンバーは、皆さん、前向きな方ばかりなわけです。「相手の立場に立って考えよう」「相手のことを積極的に理解しよう」と思って読んでいる究光塾のメンバーが、「この内容はちょっとよく分かりません」とおっしゃっているということは、おそらく、ご自身の部下に提示しても、部下には伝えられないと思います。そういう意味では、この究光塾のメンバーが、リトマス試験紙になると思っていただくと良いでしょう。

 

◆ お客様のお役に立ちたい!

自分たちの都合で売上を上げようと思っても、お客さんもその匂いを感じます。「ああ、これは営業やなぁ...」と思われてしまうと引かれます。概念論に聞こえてしまうかもしれませんが、結局、「このお客様のためにお役に立ちたい」「できれば、もう全てのことで、お役に立ちたい」という気持ちがあるかどうか、の問題だと思います。

たとえば、私がお世話になっている理容院で、私の髪を切ってもらっている担当者(スタイリスト)ではない、その部下のアシスタントさん=若手アシスタントの子が、私に、シャンプーなど販売商品の営業を掛けてくることがありました。私は、こういう職業柄もあって、「ああ、販売ノルマがあるんだろうな...」「インセンティブがあるんだろうな...」と思いながら、その子の話を聞いているわけです。私はとくにシャンプーに対してこだわりがあるわけではないんですが、私も元々知っていて、かつ、家内が今もお世話になっているお店から家内がシャンプーを買ってきているので、そのシャンプーを使っているんです。とくに、そのシャンプーを嫌だとも、何とも思っていないので・・・

その若手アシスタントの子は、いろいろな理由づけをして、私にシャンプーを販売しようと、話をしてくるわけなんです、「奥さんに怒られるんですか?」「いや、そういうわけではないんだけど・・・うちの家内はそういうタイプの人ではないので・・・、もう全部、家内に任せてあるから...」というようなやり取りがあって、いよいよ、私がシャンプーを買わないと分かったら、明らかにそこで髪の毛を洗う力が弱まるんですね(笑)・・・それは、お客様のためにやっているわけではなくて、自分のためにやっているわけなんです。それを感じるとお客さんはシラケてしまいます。それが本当に私のことを想って、「このシャンプーを使った方が髪の毛のためには良いですよ」ということであれば、じゃあ、特には要らないけど1本くらいは買おうかな、という気持ちも湧いてくるものなんですが、明らかに自分のためだな、となると、それはお客様には伝わってしまうんですね。そこが難しいところだと思います。『動機善なりや、私心なかりしか』という稲盛和夫氏の言葉を、以前にもお伝えしているように、そこを常に自分に問いかけることが大事だと思います。

そして、本当にお客様のお役に立とうと思ったら、自分のできないことであっても、何でもよいからお役に立とうという姿勢、この姿勢が、今の時代には、どんな業種であっても求められていると思います。お客様と対面できる業種であれば、「今すぐは、わからないですけど、調べてみましょうか?」とか、「うちでできるかどうか、一度、調べさせてください!」 この一言で良いと思います。もし調べてできなかったら、「ごめんなさい、うちではお役に立てそうにありません。ちなみに、インターネットで調べてみたら、こんな業者がありました...」で良いと思うんです。それが、本人が本当にお客様のお役に立ちたいと思っているかどうかの差で、それがお客様にも伝わって、「じゃあ、御社に頼もうか...」ということになってくるんだろうと思います。

 

 ◆ 概念論・抽象論へのプロセス

経営者としての思考を深めていくと、ある程度抽象的な、概念的なことを考えざるを得ない、ということになるのだろうと思います。今、私が皆さん方に対して、「具体化してください」「もっと具体的な表現にしてください」と申し上げているのは、皆さん方がまだその域には行っておられないと、私が判断しているので、こうして口酸っぱく、「具体化に考えましょう!」と申し上げている、こういうことだと考えてください。

何故かというと、私も20代の頃は、概念論ばかり考えていたことがありました。経営者の方から、「お前の言っていることは概念論どころか、抽象論だ!」と怒られたこともあります。自分で経営をろくにやったことがない若造が松下幸之助さんの言葉など、何かわかったようなことを言っていたわけです。でも、こうして、ちっぽけながら、自分で会社を経営してくると、「ああ、こういうことか」と感じることがあるわけなんです。・・・具体的なこと、いろんなことをやってみて、それらを削ぎ落としていって初めて、概念というものができてくるものなんです。

だから、言葉も同様です。端的な言葉で表せる人というのは、若いときに、いろんな言葉を弄して使って表現を試みてきた・・・で、そのなかで、エキスとして出てきてものが抽象的な言葉として、人を動かす言葉にできるのであって、そのプロセスを経ず、いきなり、格好良さだけでもって、抽象的な言葉で何かを表そうと思っても、そんなのは無理に決まっているわけなんです。世の中の凄い方と同じように、一言、二言、ワンフレーズで他人の言葉に響くような言葉を発せられるわけがないんです。ですから、今の皆さん方には、そのプロセスとして、細かなことを考えることが求められている、こうお考えになってください。

 

◆ 「賢者は愚者からも学ぶ、愚者は賢者からも学ばない」

前回、課題の再提出をお願いした方がいらっしゃいました。今回も、厳しいコメントを一部の方には申し上げました。人間というのは不思議なものですね、関心を持って、いろんな本を読んでいると、こういう言葉にぶつかりました。

 

『飲食店の経営者の中には、他店を視察した後で、この店のやり方は大手だからできることで、うちには真似できないことと、初めから学ぶことを諦めてしまったり、逆に視察した店のアラ探しばかりする人がいる。厳しい言い方になるが、そんなことをやっている人は経営者にむいていない。まず、視察する店選びだが、自店と業態や経営姿勢や違うタイプの店の方がわかりやすい。ちなみに、異業種でも、大手コンビニエンスストアや、スーパーマーケットで売れている商品を調べると、消費者志向が分かり参考になる。ユニクロなど、専門店から得られるヒントも多い。』  (サイゼリヤ創業者 正垣泰彦)

 

私が、どうして皆さん方に、たとえば今回のムハマド・ユヌスのような、皆さん方にとっては、これまで名前を聞いたこともないような外国の人の書籍を読んでください、と申し上げているかと言うと、自分とは全然違うところに、自分にとって、また自社にとってのヒントが隠れていることがあるからなんです。

違うところから学ぶということは、このサイゼリア創業者の方は、「経営者」とおっしゃっていますが、私は「ビジネスパーソン」と言い換えても良いと思っています。経営者のみならず、優秀なビジネスパーソンというのは、普通に道を歩いていても、自分の仕事であったり、自社にとっての、いろんなヒントとなるものを拾ってくるわけなんです。自分のところへのヒントというのは、逆に異業種だからこそ、ヒントになることは多いと思います。

たとえば、もともと組織論といったものを考えるにあたって、昔、大きな組織というのは、公的な組織=軍隊や病院くらいしかなかったわけなんです。ですから、最初に民間の企業をつくった人達というのは、組織運営をどこから学んだかと言うと、軍隊などから学んだわけなんです。だから、経営管理用語には軍隊用語が良く使われているわけなんですね。

じゃあ、そこで、「軍事用語ばっかりで、私たちは、別に、人の殺し合いをするわけでもないんだから・・・」と言っていて成り立つかというとそうじゃないですよね。相手の生命を奪うというやり取りはしないまでも、実質的には、相手からお客さんを奪ったりとか、敵の陣地を奪うように競合他社からシェアを奪うということを、まさしく戦争をしていると捉えれば、軍隊からも学ぶべきことはありますよ、ということなんです。

サイゼリアの経営者の方くらいになると、世界各国に視察に出かけていくこともできますが、皆さん方のように、プレイングマネージャーで、日々プレイヤーとしてもご活躍いただかないといけない立場の方にとっては、書籍というものが、限られた時間の中で、自分自身の見識を拡げる手段になってくる、こういうことです。

ですので、今後も「???・・・」と思う書籍を読んでいただくこともあるかもしれませんが、こういう背景があるんだということをご理解いただきたいと思います。皆さん、それぞれ、大変な中、しっかり書籍に向き合っていただいているのはわかります。何度も申し上げるように、私が正解を持っているわけではないです。皆さん方が、ご自身にどう活かすか?ということを考えていただきたい。「賢者は愚者からも学ぶ」です。

 

 

2.     次回までの課題ご説明

  

▼ 「報告書」について

ご上司に報告書を提出し面談のうえ、サインをいただいてください。

この報告書の目的は「上司とコミュニケーションを取っていだだくこと」です。

究光塾開催の翌週の月曜日を最終納期でお願いいたします。(7月25日まで)

 

▼  「振り返り」を全メンバーにメール送信してください。

 3日以内の送信をお願いいたします。

① 本日の内容から得たこと 

② 先月の『本日の参加により取り組むと決めたこと』の振り返り

③ 今月の参加により取り組むと決めたこと 

④ その他(必須)

「6W3H」「SMART」の観点を用いて、目標設定をしてください。

 

▼  「次回までの課題図書」について

課題図書は、『ムハマド・ユヌス自伝(下)』です。「読後リポート」そして課題図書を活用した「三つの課題と解決策の検討」に取り組んでください。

ひとつの課題につき、①課題、②実行方法、③達成手段、④目的、⑤期日を明確にしてください。課題として設定した内容のもととなった課題図書内の文章を抽出・抜粋してください。

課題として設定した理由を明確にしてください。

課題の表現については、「6W3H」「SMART」の観点を用いて設定をしてください。

提出期限は、8月20日(日曜日)でお願いいたします。

 

 

ムハマド・ユヌス自伝については、下巻を読んでいただくことにより繋がることも出てくると思います。私からのコメントについても、皆さん方に、上下巻を読んでいただいたうえでお伝えしたいと思います。

 

 

 

< 第十二回 究光塾へ続く・・・ > 

 

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